【7月30日 AFP】演技はお粗末、内容はうそ。それでも、インドではナレンドラ・モディ(Narendra Modi)政権下でヒンズー至上主義が勢いを増す中、過剰な演出がされたやらせ動画が拡散され、宗教間対立をあおっている。

 ある5分ほどの動画では、屋台のスナックにトイレ用洗剤を混ぜたイスラム教徒の男性が、通行人にとがめられる。この動画はフェイスブック(Facebook)で500万回以上再生された。

 ユーチューブ(YouTube)で350万回以上再生されている別の動画では、果物売りが量り売りの果物の数をごまかして客に渡すと、それを見破った通行人に店主が暴力を振るわれる。インドでは果物売りはイスラム教徒が多い。

 動画には「イスラム教徒のジハーディスト(聖戦主義者)から何かを買う前に、このイスラム教徒の果物屋台の動画を見よ」とキャプションが付けられている。

■フォロワー数百万人

 動画の制作側に作品の影響力について尋ねると、単純な「娯楽」で、お金を稼ぐことが目的だという返事が返ってくる。

 トイレ用洗剤の動画を制作したナレンドラ・ベルマさん(28)は、フェイスブックのフォロワーが5万5000人いるほか、ユーチューブのチャンネルも人気を集めている。

 動画制作チームは脚本、撮影、編集、アップロードなどを手掛ける計6人。ユーチューブとフェイスブック合わせて1か月当たり25万ルピー(約42万円)の収入を得ているとAFPに語った。

「世の中では実際にこうしたことが起こっている。それを回避できるよう、人々の意識向上のためにも動画を制作している」

 一方、「ムスリムの果物売り」動画を制作したラジュ・バルティさんは、登録者数289万人ほどのユーチューブチャンネルに、数百件の動画を投稿しているが、憎しみをあおっているという非難については否定する。

 バルティさんはAFPの取材に対し「デジタル詐欺や子どもの誘拐、屋台や店舗がどのように一般市民を欺いているのかという動画を作っている」「特定の宗教やコミュニティーの感情を傷付けることが目的ではなく、ただみんなに気付いてもらいたいだけ」だと説明した。