■切断リスク

 ただ、その一方で強い不安感など重大な副作用があると指摘した。

 医療関係者は、キシラジンが血管を収縮させることにより、膿瘍(のうよう)や皮膚潰瘍を引き起こすと考えている。中には体の一部を切断せざるを得ないケースもあるという。

 ブロンクスの支援センターでは、依存症の路上生活者に手当てや食料、清潔な注射器などを提供している。助言や励ましの言葉を掛けるだけの時もある。

 センターの職員は、皮膚に創傷がある人が増えていると話す。

 まず「小さな青あざや黒い点」が皮膚に現れる人が多く、しばらくするとあざの周囲の組織が壊死(えし)する。センターで働く看護師は、「そういう人を診ることが増えている。重症化することもあり、骨が見えることもある」と語った。

 ニューヨークの薬物過剰摂取による死者は2021年は2668人と、19年から80%以上増加した。フェンタニルがまん延したことの他、新型コロナウイルスの流行で麻薬使用者が孤立したこと、支援活動が停滞したことが主な原因で、アフリカ系とヒスパニック系が最も影響を受けた。

 ただ、キシラジンは規制対象となっている薬物ではないため、当局は取り締まることができない。

 ニューヨークの特別麻薬検察官、ブリジット・ブレナン(Bridget Brennan)氏はAFPに「たとえ大量のキシラジンを所持しているのを見つけたとしても、誰かを訴追することはできない」のが現状と話した。(c)AFP/Andrea BAMBINO and Diane DESOBEAU