【6月22日 東方新報】中国南部の広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)桂林市(Guilin)は中国でも有数の観光地で、「桂林山水甲天下(桂林の山水は天下一)」と言われている。カルスト地形の細く盛り上がった山々と漓江(Li River)が織りなす絶景は、日本では山水画を思い浮かべる人も多いだろう。漓江をゆっくりと観光船で下るのは定番の観光コースだが、桂林市は近年、さまざまな歴史・文化を観光地としてアピールしている。

 その一つが、秦の始皇帝が築いた運河「霊渠(れいきょ)」だ。始皇帝が中国統一を目指していた紀元前214年、南部に兵員や物資を輸送するために築いたもので、北方の「万里の長城」建造と同じ時期にあたる。霊渠は2本の運河に分かれており、全長は34キロに及ぶ。36の水門で水位を調節する高度な技術が施され、世界最古の運河の一つとされる。

 運河は長江(揚子江、Yangtze River)支流の湘江(Xiang River)と、珠江(Pearl River)につながる漓江を結んでいる。中国中部を貫く長江水系と南部を流れる珠江水系を南北に結ぶ輸送ルートとして、運河は改修されながら長い歴史の中で使われ続け、貿易や農作物、さらには文化交流を促進する役割を果たしてきた。

 今年4月29日には桂林市興安県(Xing’an)で霊渠の水門を開く際に記念イベントが行われ、古代の秦軍の甲冑(かっちゅう)をまとった兵士役の人々がラッパを吹き、場を盛り上げた。「大秦帝国ツアー」「霊渠グルメの旅」「運河巡りと民泊ツアー」など、霊渠を活用したツアーも増えている。

 桂林市内の千家洞では6月5日、新たな観光施設「千家洞文化観光リゾート」が誕生した。4億7000万元(約92億7239万円)を投じ、5年かけて完成させた。千家洞地区は少数民族のヤオ族の発祥地で、今もヤオ族の「聖地」とされている。歴史と山水、田園が融合した別天地に観光拠点を作り、ホテルの快適な暮らしと風光明媚(めいび)な自然、ヤオ族の伝統文化が楽しめるようにしている。

 桂林市には漓江下りの終着点で自然や街並みが魅力の陽朔県(Yangshuo)や、長い年月をかけて山々につくられた「龍脊棚田(龍の背の千枚田)」など、人気の観光地は多い。新たな観光資源を開拓して従来の観光地と結びつけることで、桂林の魅力をアピールしようとしている。(c)東方新報/AFPBB News