【6月20日 東方新報】色とりどりののぼりが立ち、太鼓の音と人びとの歓声が鳴り響く。中国の端午の祭日のイメージは、日本のそれより活気があってにぎやかだ。

 そもそも日本では端午の節句は5月5日だが、オリジナルである中国の端午節は旧暦の5月5日であり、今年は6月22日がその日に当たる。日付のみならず習慣、風俗も異なり、日本では男の子の健やかな成長を願ってこいのぼりを上げたり、かしわ餅を食べたりするが、中華圏ではドラゴンボートレースが行われる。

 ドラゴンボートとは、幅が細く長い船体を持ち、船首に竜の頭を装飾するなどしたボートで、一般的には20人くらいの漕(こ)ぎ手が並んで一斉にオールを漕ぐ。漕ぎ手の息を合わせるための太鼓の音のにぎやかさと、かなりのスピードで進むボートが水しぶきを上げて競う迫力満点の熱戦は、祭日気分を盛り上げるイベントとしてはぴったりだ。

 中国各地で端午節を前にドラゴンレースが始まった。広東省(Guangdong)珠海市(Zhuhai)の黄楊河(Huangyang River)では6月3日、一般参加部門に23チーム、地元の珠海チーム部門に18チーム、計41チームが参加する熱戦が繰り広げられた。当地のドラゴンボートレースは、伝統的なスポーツイベントとして年々盛り上がりと知名度を上げ、2021年には珠海市の非物質文化遺産に登録されたという。

 一般参加部門には、やはりドラゴンボートが盛んなマカオや香港からのチームも複数参加する盛り上がり。600メートルを競い、優勝チームのタイムは1分59秒86の好成績だった。一方、珠海チーム部門の優勝タイムは2分11秒05だった。

「コロナ後初のドラゴンボートレースでしたが、会場の秩序は守られながら大いに盛り上がりました。参加したチームはみな実力派で、我々のチームもチャレンジする気持ちと自信と半々でした」

 一般参加部門の優勝チームのコーチはそう感想を述べた上で、「来年も好成績を目指したい」と意欲を見せた。

 ドラゴンボートは中国を象徴する文化の一つ。本格的なレース以外の楽しみ方もある。首都・北京の観光ポイントはなんと言っても万里の長城だが、中でも北京で唯一の「水中長城」が参観できる黄花城水長城(Huanghuacheng Lakeside Great Wall)観光区は、遺跡と湖水の美しいコラボが楽しめる人気スポット。6月に入った週末には、観光客が即席でチームを作ってドラゴンボートで競う光景が見られた。

 参加した60人ほどの観光客は、基本的な動作の要領を学んだ後、数チームでレースに挑んだ。さすがに迫力では本格的なレースに及ばないが、風光明媚(めいび)な景観と中国の歴史や文化を堪能できる魅力的な体験だ。

 ドラゴンボートレースは、中華圏のみならず世界各地で開催されている。機会があれば、熱戦に歓声を送り、異文化に思いを馳(は)せてみるのも悪くない。(c)東方新報/AFPBB News