【5月16日 AFP】国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は16日、世界20か国で昨年確認された死刑執行数が前年比53%増の883件と、2017年以降で最多となったとする年次報告書を発表した。

 執行件数が多かったのは、イラン(576件)、サウジアラビア(196件)、エジプト(24件)、米国(18件)など。サウジアラビアでは1日に81件が執行されたことがあった。

 中国で秘密裏に執行された「数千件」の死刑は含まれていないが、同国がおそらく最多とみられる。

 また、北朝鮮やベトナムでも死刑執行が多数行われているものの、中国同様、実態は「秘密のベールに包まれている」としている。

 アムネスティによれば、中東・北アフリカ諸国でも特にサウジアラビア、イラン、エジプトで死刑が急増した。反体制派に対する弾圧も要因の一つだが、確認された死刑執行の40%近くは薬物関連の犯罪によるものだった。うち11件はシンガポールで執行された。

 アムネスティのアニェス・カラマール(Agnes Callamard)事務総長は、「重要なのは、死刑により過度に影響されるのは弱者であることが多いということだ」と指摘。各国政府と国連(UN)に対し、「明らかな人権侵害を行う人々への圧力を強め、国際的な保護措置を確保すべきだ」と訴えた。

 報告書は、昨年は中央アフリカ、赤道ギニア、カザフスタン、パプアニューギニア、シエラレオネ、ザンビアの6か国で死刑が部分的または全面的に廃止されたことは「わずかだが希望の兆し」だとしている。

 カラマール氏は「残忍な行為を続けているイラン、サウジ、中国、北朝鮮、ベトナムといった国は今や間違いなく少数派」「早く時代に追いついて人権を守り、死刑ではなく正義を執行すべき」だと強調した。(c)AFP