■雇用への脅威

Q:人の仕事に取って代わる可能性は脅威になるのでは?

A:AGIがなくても、人の仕事の80%くらいはなくなるのではないだろうか。チャットGPT単体ではそういうことは起きない。だが、そういったシステムも、数年もすれば出てくると思う。

 脅威ではなく、有用だと私は思っている。私たちは生活のために働くのではなく、もっとやりがいのあることを見つけられるようになる。事務作業を伴う仕事のほぼすべては、自動化できるはずだ。

 問題は、AIによって人の仕事がなくなっていく過渡期に存在する。すべての社会的な問題をどう解決すればいいのか私には分からない。

■AIのポジティブな面

Q:今の社会でロボットがやれることは? 今後AGIが実現したら、何ができるようになるのか。

A:AIで良いことがいろいろできる。

 ウェブサミット・リオで紹介した(ロボット看護師の)「グレース」もその一例だ。米国では、入居者が孤独な生活を送っている高齢者施設も多い。医療サービスや食事が提供され、大画面のテレビもあり、体調は悪くないが、精神的・社会的な支援は十分ではない。

 そこに人型ロボットを導入すれば、質問に答えてくれたり、話し相手になってくれたりする。子どもとの電話やオンライン注文も手伝ってくれるので、生活は向上する。AGIが実現すれば、その質はさらに上がる。

 この場合、人の仕事が完全になくなるわけではない。看護師や看護助手のなり手はもともと不足しているからだ。

 教育や家事の支援なども、人型ロボットが活躍できる素晴らしいマーケットになると思う。

■規制について

Q:AIがポジティブな影響を与えるには、どのような規制が必要なのか?

A:必要なのは、私たちで良いことをするAIを開発していくことだ。そして、AIのガバナンスに何らかの形でだれもが関われるようにすることも求められる。技術的にはどれも可能だ。問題は、AI研究のほぼすべてに資金提供をしている企業が、良いことをするのに無関心なことだ。彼らは株主の利益を最大化することにしか関心がない。(c)AFP/Eugenia LOGIURATTO