【5月2日 AFP】人工知能(AI)研究の第一人者とされるカナダ・トロント大学(University of Toronto)のジェフリー・ヒントン(Geoffrey Hinton)名誉教授が、米グーグル(Google)での職を退いたことが明らかになった。米メディアが1日報じた。自らが技術の基盤を築いたAIの危険性について自由に発言するためと説明している。

 1日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は、「AIのゴッドファーザー」と呼ばれるヒントン氏のインタビューを掲載。同紙によると、ヒントン氏は先月グーグルに辞意を伝えていたという。

 同氏はインタビューの中で、AI分野の進歩は「社会と人類に深刻なリスク」をもたらすと警告。「5年前と今を比べてほしい。これだけの違いがこのまま進めば、恐ろしいことになる」と語っている。

 また大手IT企業間の競争が、各社を危険なほど急速なAI開発に走らせていると指摘。AIによる雇用奪取や偽情報の拡散に警鐘を鳴らすとともに、「悪質な人物による悪用を防ぐ方法はなかなか見当たらない」と懸念した。

 AIは人間の労働を補完するために用いられてきたが、「チャットGPT(ChatGPT)」のようなチャットボット(自動会話プログラム)の急速な発展・普及により、雇用が危険にさらされる可能性があるとヒントン氏。AIは「雑務をなくす」が、「それ以上の仕事も奪うかもしれない」と語った。

 また文章や画像を作る生成AIの危険性についても警告。偽の文章や画像がインターネット上にあふれ、一般の人々は「何が真実なのか分からなくなる」と憂慮した。

 今年3月にはチャットGPTをさらに強化した「GPT-4」がリリースされたことを受け、専門家ら1000人以上がAI開発の一時停止を求める公開書簡を発表した。署名には米電気自動車(EV)大手テスラ(Tesla)のイーロン・マスク(Elon Musk)最高経営責任者(CEO)や、米アップル(Apple)の共同創業者スティーブ・ウォズニアック(Steve Wozniak)氏も名を連ねた。

 当時まだグーグルに在籍していたヒントン氏はこの署名には加わらなかったが、ニューヨークタイムズ紙のインタビューでは、科学者は「制御可能だと判断できるまで、手を広げるべきではない」と語っている。(c)AFP