■編集もAIが

 AFPの取材に応じたテレビや映画の脚本家の大半は、仕事がコンピューターに代替されることはないと考えている。しかし、スタジオや配信会社側の考えはその逆とみられ、脚本家にとっては、面目をつぶされる事態となっている。

 脚本家側が危惧(きぐ)するのは、経費節減を目指す製作スタジオの経営陣が、次のヒット作品をコンピューターに書かせようとする可能性があることだ。

 ビバリーヒルズ(Beverly Hills)で先ごろ開催された会合で、ハリウッドの経営幹部らは、そうした脚本家側の懸念を裏付けるような発言をしている。

 映画プロデューサーのトッド・リーバーマン(Todd Lieberman)氏は「今後3年の間に、AIによって製作された映画を鑑賞することになるだろう。それも優れた作品を」と述べたのだ。

 一方、FOXエンターテイメントの最高経営責任者(CEO)、ロブ・ウェイド(Rob Wade)氏は、「(AIが担う分野は)脚本にとどまらず、編集など全てに及ぶ」と指摘。「来年、再来年ではなくても、10年後であれば、AIは確実にあらゆる仕事をこなせるようになるだろう」との見通しを示した。

 AFPが入手した情報によると、脚本家側はスタジオ側との交渉で、報酬に影響が及ばない限り、AIを「製作プロセスの一環として」活用することは容認する姿勢を示したとされる。

 ネットフリックスの大ヒットドラマ『ブリジャートン家(Bridgerton)』の脚本を手掛けたレイラ・コーハン(Leila Cohan)氏は、脚本家にとってAIが有用となるのは、登場人物の名前を考えるといった「手間のかかる作業」に限定されるとみている。

 ただ、コーハン氏は「(スタジオとしては)AIに使い物にならないような代物の原案を執筆させ、脚本家に書き直しを発注するかもしれない」とも予想。「ぞっとする事態だ。この問題に今、取り組むのは非常に賢明な判断だ」と語った。