【1月5日 CNS】新型コロナウイルスの拡大を抑える厳格な対策が緩和された中国では、解熱剤やN95マスク、抗原キットの需要が急増し、在庫切れにすらなっている。その中で、黄桃の缶詰も「爆買い」の対象となっている。

 物資が豊かでなかった時代、中国東北部では子どもが風邪をひいた時に黄桃の缶詰を与えるのが定番だった。「冷たくて甘い黄桃の缶詰を食べて、気分が良くなった」という体験をした人は多い。果物は水分や糖分、ビタミンを補給するのにちょうど良いが、当時は新鮮な果物を輸送・保管する体制が整っておらず、缶詰が栄養補助食品の役割を担っていた。

 遼寧省(Liaoning)在住の邱(Qiu)さんは「昔は黄桃より、ミカンやリンゴの缶詰が人気だった」と話す。それが1990年代に入ると、「桃の木は邪気をはらう」という中国の伝統的なイメージと、「桃(Tao)」の発音が「逃(Tao)」と同じで「病が逃げる」という縁起担ぎから、黄桃が「缶詰の王様」となった。

 現在のコロナ禍で、あらためて「黄桃の缶詰がコロナに効果がある」という噂(うわさ)がインターネットを通じて広がり、東北部に限らず中国各地で黄桃の缶詰を買いだめする動きが広がった。

 しかし、山西医科大学(Shanxi Medical University)第二病院の呼吸器・救命救急医療部門の高暁玲(Gao Xiaoling)副部長は「黄桃の缶詰には発熱やせきを抑える特別な薬効はない」と指摘。思い込みで体調が回復する「プラシーボ(偽薬)効果」にすぎず、黄桃の缶詰を食べるとせきが悪化する場合もあるという。

 大手缶詰メーカーの林家鋪子(Linjiapuzi)も「黄桃の缶詰自体に薬効はありません。また、黄桃の缶詰の供給は十分あり、買いだめをする必要はありません」と声明を発表し、桃缶の「神格化」を打ち消すのに躍起となっている。(c)CNS/JCM/AFPBB News