【1月1日 AFP】批判と称賛の両方が集まったサッカーW杯(2022 World Cup)を終え、カタールはここから2036年の五輪招致、さらにはスポーツ界の中心となることを目指す長い道のりへ乗り出そうとしている。

 W杯では、アルゼンチン代表のリオネル・メッシ(Lionel Messi)とポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)が莫大(ばくだい)な費用を投じて建設したスタジアムでゴールを決め、涙を流したが、その最中にカタールのスポーツ関係者は、ピッチ外で次の勝利を収めていた。

 大会期間中には、2025年の世界卓球選手権(2025 World Table Tennis Championships)と、2024年の世界耐久選手権(FIA World Endurance ChampionshipWEC)初戦の開催が決まり、イベント満載のカタールのスポーツカレンダーに新たな予定が追加された。

 2023年には、フォーミュラワン(F1、F1世界選手権)のカタールGP(Qatar Grand Prix)が2年ぶりに開催され、会場となるルサイル・インターナショナル・サーキット(Losail International Circuit)はW杯期間中に大規模な改修が行われた。また、中国が開催権を返上したサッカーの第18回アジアカップ(2023 AFC Asian Cup)についても、カタールは開催に名乗りを上げ、2024年には世界水泳選手権(21st FINA World Championships)も行われる。

 カタールのスポーツ専門チャンネルであるbeInスポーツ(beIn Sports)の加入者数と放映権も拡大し、スポーツに関するカタールの力は強まっている。

■W杯は「オウンゴール」?

 国際オリンピック委員会(IOC)でマーケティング部長を務めたマイケル・ペイン(Michael Payne)氏は、スポーツ大会開催は「非常に強力なゲームチェンジャーとしてのツールだ」と語る。国内の人権問題、特にW杯のスタジアム建設に携わり、世界有数の富裕国であるカタールの経済を支える外国人労働者の扱いが批判される中で、同国のスポーツ面での野心はとどまるところを知らない。

 次の大きな目標は、2025年以降に決まる2036年夏季五輪の招致成功だ。タミム・ビン・ハマド・サーニ(Tamim bin Hamad al-Thani)首長はIOC委員で、国はすでに2016年大会、2020年大会、2032年大会で招致レースに参戦した。

 W杯開催が、五輪招致に不利にはたらくと分析する人もいる。五輪運動を専門とするローザンヌ大学(University of Lausanne)のジャンルー・シャプレ氏は、開会3か月前にW杯開幕戦の日程を変更したり、スタジアム周辺でのビールの販売を開幕2日前に禁止したりしたことは「誤り」だと話している。

 シャプレ氏は、「IOCは(2032年大会で)そうした事態を望まなかったし、W杯後もその姿勢はまったく変わっていないと思う」と話す。

 マーケティングを長年専門としてきたペイン氏は一方で、カタールと国際サッカー連盟(FIFA)は「オウンゴール」を献上したとしつつ、そういったことはすぐさま忘れ去られてしまうと付け加えた。

 IOCは五輪を各地域の持ちまわりで開催してきており、中東での開催はこれまでに一度もない。しかし、夏の暑さが最高で50度にも達するカタールで行うのであれば、夏季五輪を冬の時期に移動させなければならない。

 招致レースではサウジアラビアやトルコと争う可能性がある。トルコは過去に5回招致に挑戦しており、サウジアラビアは現在は国交が回復したが、2017年から2021年にかけてカタールと断交していた。

 カタールは、アラブ諸国でのW杯の熱気を理由に、大会の成功をアピールしている。ジョージタウン大学(Georgetown University)カタール校の准教授で、W杯プロジェクトを主導したダニエル・ライヘ氏は、「W杯ではアラブが団結して再び盛り上がったが、それが大会後いつまで続くかは分からない」としつつ、スポーツは「平和を築くツール」になるべきだと述べた。

 ライヘ准教授は、2036年五輪の招致は、米国、メキシコ、カナダの共催で行われる2026年W杯(2026 World Cup)や、その他の大規模大会に倣って、カタールとサウジアラビアの共催で立候補すべきだと考えており、「中東の他の国とスポーツイベントを共催すれば、例えば大きな対立を仲裁したことがある世界のよき一員というように、カタールのイメージもアップする」と話している。(c)AFP/Raphaelle Peltier and Tim Witcher