【12月10日 AFP】近世スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテス(Miguel de Cervantes)の小説「ドン・キホーテ(Don Quixote)」の希少本2冊が今月、仏パリで競売に掛けられる。英ロンドンの競売大手サザビーズ(Sotheby's)が公開した。落札予想価格は合わせて40万~60万ユーロ(約5800万~8600万円)。

 出品されるのは「ドン・キホーテ」第1部(初版は1605年刊)の第3版と、第2部(1615年刊)の初版。熱心な古書収集家だったボリビア人外交官ホルヘ・オルティス・リナレス(Jorge Ortiz Linares)氏が1936年にロンドンの古書店マグズ・ブラザーズ(Maggs Bros.)で入手した。

 1853年創業の同書店は英王室のみならず、国外に亡命したポルトガルのマヌエル2世(Manuel II)、スペインのアルフォンソ13世(Alfonso XIII)といった君主らの間でよく知られ、スペイン語書籍の希少版が充実している。

 サザビーズによると、「ドン・キホーテ」第1部の第3版は1608年、セルバンテスの存命中に印刷された最後の版で、作家自身の手で修正された。現在の翻訳はすべてこの第3版を基にしているため、重要度が高いという。

 1936年12月21日にマグズ・ブラザーズを訪れたオルティス・リナレス氏は他にも、セルバンテスの「模範小説集(Novelas ejemplares)」の初版(1613年刊)、ガルシラソ・デ・ラ・ベガ(Garcilaso de la Vega)が先住民の視点から米大陸の征服を描いた「La Florida del Inca(インカのフロリダ)」(1605年刊)、歴史上初めてカリフォルニアに言及したメキシコ征服記「Hispania Victrix(イスパニア・ビクトリクス)」(1553年刊)を購入した。

 これらの古書とその他83点が「オルティス・リナレス・コレクション」として出品される。(c)AFP