【11月20日 AFP】これまで白人で占められていた南アフリカのワイン業界に近年、黒人がさまざまな障壁を乗り越えて進出している。

 ポール・シグカ(Paul Siguqa)さん(41)もその一人だ。15年間お金をためて、南西部フランシュフック(Franschhoek)の農園を購入した。農園の名前「クライン・フダラスト(Klein Goederust)」は、アフリカーンス語で「しばしの休息」を意味する。

 シグカさんの母親はアパルトヘイト(人種隔離)時代に37年間、主要都市ケープタウン近郊のワイン生産地の農園で働いた。「農園で黒人労働者の子どもとして生まれると、その農家の次の労働力として育てられる」とシグカさん。

 フランシュフックには、数百年の歴史があるブドウ畑が点在する。シグカさんは2019年に購入した「荒れ果てた」農園をリノベーションし、昨年オープンさせた。

 有色人種の起業家の参入は土地の入手や資金確保が難しく、遅々として進まない。その結果、業界全体として、変化のペースを加速させようという動きが起きている。

 スタートアップ向けの助成金やインターンシップを取りまとめる非営利企業「南アフリカ・ワイン産業変革ユニット(WITU)」のマネジャー、ウェンディ・ピーターセン(Wendy Petersen)氏は、リソースは十分ではなく、候補者間で少しずつ分け合わなければならないと指摘する。

 WITUは新たな生産者育成のため、国内のワイン造り拠点となっているステレンボッシュ(Stellenbosch)に、テイスティングルーム「ワインアーク(Wine Arc)」を開設した。

 ここで扱っているブランドに、2011年に南ア初の黒人のみが所有するワイナリーとして設立され、14年に最初のビンテージを発表したカルメン・スティーブンス・ワインズ(Carmen Stevens Wines)がある。

 設立者のカルメン・スティーブンス(Carmen Stevens)さん(51)は、普通の生産者とは少し違っている。