■変異株の脅威

 ワクチンの観点においては感染力の強い変異株「オミクロン株」は戒めとなると同時に試金石ともなった。

 疫学者の多くは、新型コロナを感染が広がるまま放置しておくと、新しい株に変異する可能性が高まると指摘している。しかも新しい変異株が弱毒化する保証はどこにもない。

「ウイルスは、時間とともにより穏やかなものに進化するという楽観的な誤解が広まっている」とカツラキス氏は警告する。例えばデルタ株は、中国・武漢(Wuhan)で発生した最初の株より致死率は高いと指摘した。

 またオミクロン株は、既存のワクチンによる免疫をすり抜けることもある。ただし重症化や死亡を防ぐためにはワクチン、特に現在世界中で実施されている3回目の追加接種(ブースター接種)は、非常に効果的だ。

■ワクチンの今後

 イスラエルやスウェーデンなどでは4回目の接種が始まっているが、専門家はブースター接種を際限なく続けるのは近視眼的な戦略だと懸念している。

 ワクチンがターゲットとする対象を新型コロナ以外に広げる考え方もある。

 米政権のアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)首席医療顧問ら3人の研究者は、新型コロナだけではなく、動物由来で新たなパンデミックを引き起こす可能性のある別種のコロナウイルスにも効果がある「万能コロナウイルスワクチン」を開発する必要性を訴えている。

 しかし、克服しなくてはならない問題・障害も多く、人を対象とした最初の試験は始まったばかりだ。

 その一方でWHOは、富裕国がさらに接種を進めるよりもワクチンを他国に提供することが、パンデミックの急性期を終わらせる最善の方法だと訴えている。

 WHOによると、アフリカ大陸での2回目のワクチン接種完了率は2月末時点で13%にとどまり、今年半ばまでの目標とされる70%をはるかに下回っている。(c)AFP/Julien DURY