■「最大の課題」

「可能性という点では、もちろんどうなるか分からないが、無観客は基本的に望ましくない。しかし、春にどのような結論になるかは、今後のことなので、予断をもって申し上げることはできない」

 仮に入場ができても、声援が禁止されれば、過去の五輪とは異なる雰囲気の大会になる。武藤事務総長もそのことは認めつつ、「観客の方々が試合を見て受ける感動には、いささかも変更がないと思う。ドラマがある限り、人々に感動を与えることはできる」と続けた。

「最大の課題」は、選手に対する定期的な検査の実施、移動の制限、選手村の滞在期間の短縮などを定めた数多くの対策を実行する部分で、「コロナ対策をしっかり講じなければ、安心・安全な五輪にはならない」と話している。

 世界的にみれば、日本の感染状況はひどくない方で、ここまで死者も4500人超に抑えられているが、このところの数字の急増を受けて、五輪開催への不安も再燃している。共同通信(Kyodo News)の世論調査では、45パーセントが再延期、35パーセントが中止を望んでいるという結果が出た。

 武藤事務総長は、国内外で厳しい感染状況の中で「人々が不安を感じるのは当然だ」と述べた上で、ワクチン接種が始まって状況が改善していけば、国民の理解も進んでいくはずだと話している。

 しかし日本では、医療従事者や高齢者を対象としたワクチン接種が始まるのが2月下旬からの予定で、一般の人が接種できるようになるのは、五輪開幕2か月前の5月からだという報道も出ている。武藤事務総長も、選手やファンに対するワクチン接種の義務化は議論していないと改めて口にしている。

 武藤事務総長は、新型ウイルスが近い将来に完全に消える可能性は低いと予測した上で、だからこそ五輪の重要性は高まると話している。

「そういう状況だからこそ、スポーツを通じて人類の平和と共存を実現するという、五輪の価値をもう一回思い出す必要があると思う」

「もしわれわれが東京大会で、大きなイベントをコロナのもとで開催できれば、東京モデルが一つのレガシーとして残っていくのではないかと思う」 (c)AFP/Andrew MCKIRDY