【5月13日 AFP】交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブック(Facebook)は、コンテンツ監視業務に従事し暴力的な画像などを見たことで精神的なトラウマを受けたとして同社に損害賠償請求集団訴訟を起こした約1万人に計5200万ドル(約56億円)の和解金を支払うことに合意した。原告側代理人が12日、明らかにした。

 2018年に提訴された集団訴訟で、不適切コンテンツの監視業務を行うコンテンツモデレーターらは、児童性的虐待や斬首、テロ、動物虐待、レイプ、殺人などの生々しいコンテンツに繰り返しさらされたことで精神的外傷を受けたと主張していた。

 カリフォルニア州の裁判所に提出される合意書には、フェイスブックの外注先企業に現在勤務している、または過去に勤務していたコンテンツモデレーター1万人に対し、同社が和解金を支払う旨が記載される。集団訴訟の原告全員に少なくとも1000ドル(約11万円)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)をはじめとする特定の精神疾患だと診断された人にはさらに最大5万ドル(約540万円)が支払われるという。

 さらに、フェイスブックは米国内の外注先企業に雇用されているコンテンツモデレーターに対し、メンタルヘルスのサポートやカウンセリングを提供することにも合意した。

 原告側代理人の一人、ジョセフ・サベリ法律事務所(Joseph Saveri Law Firm)のスティーブ・ウィリアムズ(Steve Williams)弁護士は、「フェイスブックが働く人々を助けるためにわれわれと協力し、数年前には想像もできなかったようなプログラムを創設したことをうれしく思う」「この仕事によって受け得る被害は、現実的で深刻だ。この和解は意味のある救済であり、その一端を担えたことを誇りに思う」と述べた。

 今回の訴訟は、フェイスブックの外注先にコンテンツモデレーターとして雇用された契約社員のストレスや厳しい状況を浮き彫りにした英紙ガーディアン(Guardian)などの報道が発端となっている。

 原告の一人、セレーナ・スコラ(Selena Scola)さんは、「毎朝9時に出社し、パソコンの電源を入れて、誰かが首を斬られるのを見る。毎日、毎分、そういうものを見る。斬り落とされる頭を」とガーディアン紙に語っていた。(c)AFP