■紛争報道が激減する恐れも

 一方で、パンデミックが今後数か月で紛争当事者の意志や戦闘能力を弱らせる可能性もあるという一部専門家の指摘もある。

 米首都ワシントンに拠点を置く非政府組織「国際危機グループ(ICG)」のロバート・マリー(Robert Malley)氏は、「戦場に部隊を送れば国家も非国家武装組織もウイルスにさらされることになり、甚だしい人命の損失に見舞われる恐れがある」として、「(ウイルスによって)国家や国連、地域機関、難民支援組織、平和維持軍などの紛争解決や予防に向けた意志や能力が損なわれるのはほぼ確実だ」と指摘した。

 また、戦闘地域へのアクセスや中立国での交渉が困難になり、資金を新型ウイルス対策に転用する必要も生じるなど、ありとあらゆる新たな障害が生じる。

「経済的、社会的、政治的にほぼ前例のない危機に直面している時に、どこの政府がイエメンやシリア、アフガニスタン、サヘル地域などの和平実現に投資したいと思うだろうか?」とマリー氏は言う。

 報道機関が新型ウイルスばかり取り上げていれば、「こうした紛争がいかに残忍で暴力に満ちたものであっても、多くの人々はそれを目にすることも耳にすることもできない」と同氏は警告した。(c)AFP/Philippe RATER