■日本にもようやく#MeToo運動が

 米ハリウッドの映画界から伊オペラ界まで世界中を席巻しているセクハラ告発運動「#MeToo(私も)」。これまで日本では今一つ盛り上がりをみせてこなかった。

 しかし、性犯罪の被害者を守れという呼びかけへの支持は確実に広がっている。4月に東京でスタートしたフラワーデモが、来月11日には21都市で行われることが予定されているのだ。

 デモに参加したある女性は「Protect Victims, Not Perpetrators(加害者ではなく、被害者の保護を)」とのバナーを掲げていた。別の参加者はマイクを持ち、涙声で語りかけた。

「なぜ私たち声をからして、涙を流して、何度も何度も訴えないといけないんですか。そんなに私たち、ありえないことを求めていますか」

 1世紀以上も前に制定された日本の刑法。当時、性被害女性の人権を守る視点は極めて希薄だったとセクハラ事件に詳しい角田由紀子(Yukiko Tsunoda)弁護士は指摘する。

「刑法がいつできたか、1907年です。そのときの日本は法的にも家父長制そのものだった」

「妻の産む子どもが自分の子どもだという保証がなくなる、だからレイピストを処罰する。絶対に他の男を妻に性的にアクセスさせないということ、貞操法という考え方。…それは、夫なり父のための利益だった」と、角田弁護士は言う。

「ちょっと殴られた程度でセックスをゆるしてしまうような女を、誰が守るかということ」

 性犯罪に関する現行法には、日本における男女差別の意識が脈々と流れ続けている、法制度に残存する性差別的規範が女性の人権を制度的に損なっている、そう角田弁護士は話す。世界経済フォーラム(WEF)の男女格差に関する2018年の年次報告書で日本が149か国中110位に位置するのも、当然の結果だというのだ。