■「治安上のリスク」

 イスラエル当局は、解体した複数のビルが建っていた場所は分離壁に近すぎ、治安上のリスクがあったと説明する。

 国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、イスラエルはスル・バヘールの分離壁の周辺100~300メートルに緩衝地帯を設定している。

 OCHAはまた、全10棟の解体により、3世帯17人が住む場所を失う他、350人に影響が出るとしている。集合住宅の完成後は計70戸が入居する予定だったという。

 パレスチナ側は、イスラエル当局が長年に及ぶユダヤ人入植地の拡大と、そこに連結する道路拡張の一環としてパレスチナ人を追放する口実に治安を用いているとして非難している。

 イスラエル当局がスル・バヘールの集合住宅を解体する方針を通告したのは、約30日前の6月18日。周辺の住民らは近い将来、さらに100棟が同様の状況に置かれる恐れがあると懸念している。

 イスラエル当局が支配する地区で、パレスチナ人が建設許可を取得することは極めて難しい。パレスチナ人や人権活動家らは、そのために住宅不足が起きていると述べている。

 映像はエルサレムのスル・バヘール地区でイスラエル当局が解体したパレスチナ人の集合住宅、22日撮影。(c)AFP/Mike Smith