■貿易戦争から技術戦争、そして才能争奪戦

 例えば、スーパーコンピューターから核兵器に至るまであらゆる先端研究を実施している米エネルギー省は対策の一つとして、国家安全保障と競争関係を理由に、外国政府による人材募集プログラムに米国の科学者が参加することを禁じた。

 AFPが確認した同省の通達は特定の国を名指しこそしていないものの、当局者らは中国政府が実施している海外ハイレベル人材招致計画、通称「千人計画(Thousand Talents Programme)」のことだと指摘している。

 学者や専門家らは、こうした不信の高まりが共同研究に影響を及ぼすのは必至だと発言している。

 米ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)のある関係者は匿名を条件に、安全保障上の理由だとしてプロジェクト参加を拒否される若い中国人学者が増えていると語った。

 中国・浙江省(Zhejiang)寧波市(Ningbo)に海外キャンパスを構える英ノッティンガム大学(University of Nottingham)イノベーション学教授のカオ・コン(Cao Cong)氏は「米中貿易戦争は転じて技術戦争となっており、これは本質的に才能争奪戦であるため、米中間の共同研究は深刻なダメージを受けるだろう」と警告する。

 同氏によれば中国政府は近年、米国との科学技術の差を埋めるために巨額を費やしてきた。だが中国は今なお技術移転や教育の面で米国に大きく依存しており、その「打ち切り」は今後数年間で影響が現われるだろうと指摘する。