【6月2日 AFP】米フロリダ州の少年院で数十年にわたり虐待と拷問を受け続けたジェリー・クーパー(Jerry Cooper)さん(74)は、その経験が自分を何か恐ろしいものに変えてしまったと話す。

 数年前に墓標のない墓が数十か所で見つかった同州北西部マリアナ(Marianna)にあるかつての少年院の敷地内で、新たに墓とみられるものが複数見つかった。当局は、今回見つかったものの調査や被害者らの心の傷を癒やす取り組みを行う姿勢を示している。だが虐待を受けてから60年が経過した今、それだけでは不十分だとクーパーさんは話す。

「少年院に入った時、私は子どもだった。だが出て行く時には子どもではなく、怪物になっていた」「暴力は暴力を生む。私たちが学んだのはそれだけだ。1日24時間、精神的、身体的、性的な暴力が絶え間なく繰り返された」

 少年院「フロリダ・スクール・オブ・ボーイズ(Florida School of Boys)」、通称「ドジャー(Dozier)」は、567ヘクタールの敷地面積を持つ。この地域は昨年10月に大型ハリケーン「マイケル(Michael)」に見舞われ、そのことが今回の発見のきっかけとなった。

 地元紙タンパベイ・タイムズ(Tampa Bay Times)が4月に報道したところによると、ハリケーン通過後に行われた清掃作業で、少年院跡地に人骨とみられる27の「異物」が見つかった。

 ロン・デサンティス(Ron DeSantis)州知事の報道官がAFPに語ったところによると、サウスフロリダ大学(University of South Florida)の人類学チームが4年間かけて行い2016年に終了した調査でも、墓標のない墓が同少年院跡地で55か所発見されたという。

 今回発見された異物について、クーパーさんは、それがさらなる墓だったとしても驚かないと話す。その少年院はまさに修羅場だったという。

 1961年、当時16歳だったクーパーさんは、真夜中に看守らに部屋から引きずり出され、革のベルトで135回むち打たれた。自分の血が壁に飛び散るのが見えたという。「あの経験はいまだに乗り越えられていない。誰もできないだろう」。クーパーさんは頭を振りながらそう話す。

 クーパーさんは現在、フロリダ州南西部フォートマイヤーズ(Fort Myers)にある退職者が多く住む地区で妻と暮らしている。