■偶像崇拝を禁じるイスラム教の教義に反しているから?

 サルマン皇太子は、この報道について肯定も否定もしていない。バドル王子は昨年6月、サウジアラビア初の文化相に指名されている。

 サウジアラビアは隣国UAEと非常に近い関係で、両国は共に、イエメン内戦で政権派の有志連合軍に参加している。サルマン皇太子は、UAEのアブダビのムハンマド・ビン・ザイド・ナハヤン皇太子(Crown Prince Mohamed bin Zayed)と親しく、ムハンマド皇太子は2017年、ルーブル・アブダビの開館式典にマクロン氏と共に出席していた。

 サルバトール・ムンディが展示されなくなった時期、サルマン皇太子は反体制派のサウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏が殺害された件で国際社会から厳しい目を向けられ、皇太子自身は事件への関与を否定したものの、体面を失った。

 美術品市場調査会社アートプライス(Artprice)によると、サルマン皇太子は、イスラム教スンニ派(Sunni)の最高教育機関であるエジプト・カイロのアズハル大学(Al-Azhar University)から、サルバトール・ムンディを宗教的な場所に展示してはならないとくぎを刺されたのだという。

 イスラム教ではキリストは預言者の一人とされ、偶像崇拝が禁じられている。だが、サルバトール・ムンディではキリストは救世主で、神として描かれている。