■それぞれの過酷な体験

 ビッサさんは捕らえられた後、サウジアラビア人3人、自称スウェーデン人1人を含む6人のIS戦闘員の間で「売り買い」された。繰り返し残忍に扱われたが、怖くて逃げることができなかった。オマル(Omar)油田に近いSDF関連施設でビッサさんは、「逃げようとすれば誰でも、毎日違う男の相手をさせる罰を与えると言われた」と語った。

 わずか13歳の時にシンジャルから拉致された17歳のナディンさんは、2回逃げようとした。だが、2回ともISの警察組織によって捕らえられた。「ホースで打たれた。傷痕が痛くて眠れなかった」と語る。

 ナディンさんはISが独自に解釈した残忍な教義に従うことを余儀なくされ、公共の場では頭の先からつま先まで体を覆っていた。今でも顔を覆う黒いベールを取る勇気がない。「慣れてしまってもう外せない」「お母さんに会ったら外せると思う」

 ナディンさんのいとこたちは、今でもシリア東部のISの支配地に拘束されていると言う。

 ISは全盛期、英国とほぼ同面積を支配下に置いていた。だが、米主導の有志連合による空爆などさまざまな攻撃を受け、今では東部の一部地域を除きすべてを失った。

 2015~18年の間に、少なくとも129人のヤジディー教徒の女性・少女が、SDFのクルド女性防衛部隊(YPJ)に引き渡された。

 ヤジディー教徒のサブハさん(30)はYPJの施設で、結婚を強要されたIS戦闘員のクルド人の男が空爆で死んだので、子ども6人を連れてISの最後の支配地から逃げ出したと語った。5人は最初の夫との子で、1歳半の娘だけがIS戦闘員の子どもだ。IS戦闘員の男はサブハさんを殴り、従わなければ子どもたちを殺すと脅したと言う。

 サブハさんは今、家族が待つ家に戻ることを楽しみにしている。「でも、何よりうれしいのは、子どもたちの命を守れたことだ」と話す。(c)AFP/Rouba El-Husseini