■PTSD治療に有望

 研究チームは、MDMAが脳の上側頭皮質と中帯状皮質の活動を高めることを発見した。この2領域は、他者の思考や意思への共感にとって重要な脳領域であることが知られている。

 またMDMAを投与された被験者が、信用できる被験者と信用できない被験者のそれぞれの行動を処理する際に、右前島皮質の活動に顕著な違いが観察された。右前島皮質はリスクや不確実性の評価において重要な脳部位とされる。

「言い換えれば、MDMAの作用で被験者が他者を無警戒に信用することはなかったことになる」と、メータ氏は説明した。「MDMAは脳の挙動に大局的な影響を及ぼすのではなく、実際の影響は極めて特異的で、これを示した研究は今回が初めてであり、実に有用だ」

 米専門誌「神経科学ジャーナル(Journal of Neuroscience)」に論文を発表した研究チームによると、今回の発見は心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患の治療の助けとなる可能性があるという。

 MDMAは米食品医薬品局(FDA)によって「ブレークスルー・セラピー(画期的治療薬)」の指定を受けている。

 PTSD治療のフェーズ3臨床試験が現在進行中だが、MDMAを医療研究目的でより広く利用可能にするべきだとメータ氏は指摘した。「治療の利用については非常に有望なので、人々に利用機会を与えないのは倫理に反すると思われる」「MDMAがどのように作用するかや、どのように脳に影響するかなど、MDMAに新たな関心が寄せられている」

(c)AFP/Patrick GALEY