■「信用度が増す」

 中国・深セン(Shenzhen)にある小さな事務所で、2人は中国人実業家らをドイツに移住させるための勧誘に乗り出した。

 ドイツで法人登記を行えば、ドイツで事業を行う際により信用性が高いとみなされる、というのが誘い文句だった。ドイツ企業にとって、深センや上海(Shanghai)にある有限会社との取り引きには常に若干のリスクがつきまとう。それは、単に法規範がないことに起因している。

 ホーさんは、ホップシュテッテン・バイアースバッハから1990年代に米軍が撤退した後、居住地区が空いたままになっていることをドイツ人の知り合いから聞いた。

 フランクフルトの空港から車で約90分かかるこの町は、若者が都会へ流出し過疎化が進んでいた。そのため、その地区を整備して中国人らに販売する計画をICCNが持ち掛けると、地元の政治家たちは歓迎した。

 その静かな環境は、好景気に沸く中国の大都市に比べれば別世界のようだが、かえってそれがセールスポイントになることも分かった。

■「きれいな空気や水」

 投資を考えているというヤン・ハイ(Yang Hai)さんは、きれいな空気や水道から出てきた水をそのまま飲めることに感激したという。

 ヤンさんはICCNが企画した、現地視察の機会を提供する独中経済フォーラムに出席するためこの町に滞在していた。製薬関連事業への投資話がうまく進めば、センターは初めて貿易から製造へ足を踏み入れることになる。

「われわれはカナダや米国も視野に入れていたが、カナダは寒いし、米国は予測不可能な展開が多すぎるので、ドイツの方がいいかもしれない」とヤンさんは話す。

 ドイツの反対側にある東部ケムニッツ(Chemnitz)は、相次ぐ外国人排斥デモに揺れている。だが、ホップシュテッテン・バイアースバッハの新たな住民たちは、地元の人々からは親しみしか感じないと話す。