■アイデアを生むための「詰め込み式養鶏場」

 ベルリンはこれまでもIT企業文化と無縁だったわけではない。多くのIT企業が流入し、オフィスで無料のビールやスナック、マッサージまでを提供し、上下関係のない組織をアピールして、プログラマーたちを引き付けてきた。

 ベルリンの「シリコン・アリー(ドイツ語で「シリコン・アベニュー」の意味)」の企業は、スタートアップに対する投資において今や欧州で1、2を争う対象となっている。グーグルもすでに流行地区プレンツラウアー・ベルク(Prenzlauer Berg)近くで、「ファクトリー」と呼ぶコワーキングスペースを運営している。

 ベルリンは戦後数十年、東西に分裂したドイツのうち共産主義国だった東ドイツに組み込まれて停滞し、産業基盤の大部分が失われた。今でもその影響が残っている。

 ケルン経済研究所(Cologne Institute for Economic Research)が昨年発表した研究結果によると、もしもベルリンが突如消えれば、ドイツの国内総生産(GDP)は0.2%上昇するという。ベルリンのミヒャエル・ミュラー(Michael Mueller)市長がグーグルによる開発に賛成している一因は、これかもしれない。

 グーグルの新拠点で働くことになる正社員は5人にすぎず、建物の中2階には大勢の「住民」がアイデアを育むためのスペース、IT「インキュベーター」が設置される。

 だが、ラリー・ページブランク氏のような反対派は納得がいかない。「彼らはバタリー式(狭いケージにニワトリを詰め込む方法)養鶏場でさまざまなアイデアや、才能ある人々、プロジェクトを飼育してグーグル帝国に取り込み、アイルランドやオランダ経由で納税を逃れようとするんだ」と同氏は予言した。