■世界有数の死刑執行国

 ベトナムの刑務所についてはあまり知られていない。だが、公安省は昨年、珍しく報告書を公表した。これによると、2013年8月~16年6月に刑を執行された死刑囚は429人だった。年平均では147人の死刑が執行されていることになり、ベトナムが中国やイランと並び世界有数の死刑執行国であることがわかる。

 刑務所の状態についての詳しい情報は乏しく、メディアのアクセスは厳しく制限されている。だが、法律では死刑囚は独房に収容し、24時間体制で監視することが定められている。受刑者は「危険」と見なされ、1日のほとんどの時間を片足に足かせをはめられた状態で過ごす。足かせが外されるのは独房内で入浴する15分間だけだ。食事も排せつも独房で行う。

 国際人権連盟(FIDH)のアンドレア・ジョルゲッタ(Andrea Giorgetta)氏は「治療の拒否に加え拷問も行われていて、刑務所内で死に至る場合が多い。だが、当局が調査をすることはほとんどない」とAFPに語った。

 公安省の報告書では、2011~16年に刑務所内で死亡した死刑囚は36人とされているが、死因は示されていない。

 チュオン死刑囚は家族への手紙で、逆さまにつるされたり、裸にされ汚い靴下を口に詰め込まれたり、取り調べ中に殴られたりするなど拘束中に拷問を受けていると書いている。さらに警察は性器に電気ショックを与え、強要に応じて自白するまで針で刺し続けたという。

 ベトナム外務省はAFPの取材に対し、拷問が行われているという主張は「誤った情報」だとして否定。また受刑者の「名誉と尊厳」を傷つけるようなことは何もしてないと主張した。