■希望の光

 その後、避難生活が1年続いた。サレハさんと家族は1つの部屋で暮らすことを強いられたが、イラク政府が元の地域をISから奪還したため、無事に帰ることができた。

 ISの勢力が大きく崩れた今、サレハさんの勇気と愛のある行為は人々の希望の光となった。サレハさんはスンニ派だが、シーア派からもその行為をたたえられ、国からも表彰された。だが、もっとうれしかったことが他にあった。

「神は私から夫、息子、おいを奪ったが、代わりに私を慰めてくれる若者を与えてくれた」と、助かった候補生たちの存在に触れた。

 戦闘が終わり、若い兵士たちは家に帰った。そして自分たちを救ってくれたサレハさんに感謝し、希望を求めていた国民にサレハさんの話を語り始めた。

「彼らは私を訪ねてくるようになり、私も彼らの元を訪ねるようになった。バグダッドで会議があるときは、一緒に来てくれる」と話した。

 サレハさんは先月、米国務省主催の「国際勇気ある女性賞(Woman of Courage Award)」を米首都ワシントン(Washington D.C.)で受賞した。

 サレハさんは授賞式の前に、「初めは来るのが嫌だった。疲れてもいた。でも、今はずっと気分が良くなった。通りで人々は私にほほ笑みかけてくれる。まるで笑顔が人々を立ち直らせ、安全で守られているように感じた」としながら、「イラクの人々は何年もほほ笑むことができなくなっている。ただ泣いて悲しんでいるばかりだ」とコメントした。(c)AFP