■怒りで言いたい放題のトランプ大統領

 フリーエージェント(FA)となった30歳のキャパニックが、2015年にフォーティナイナーズをスーパーボウルに導いた実力者でありながらも、NFLの32球団からその価値を認められずにリーグから締め出しされてしまったことで、シーズン開幕の9月が近づく頃には、同選手の抗議行動はほとんど風前のともしびとなっていた。

 シーズン序盤には多くの選手が国歌演奏時に膝つきを続けていたものの、話題としては下火になっていたこの問題を取り巻く状況が一変したのは、トランプ大統領がアラバマ州での演説中に、国歌演奏時の起立を拒否しているNFL選手を問題視する発言を行った9月22日のことだった。

 トランプ大統領は演説で、NFLのオーナーたちが「フィールドから今すぐ出て行け、くそ野郎。クビだ、お前はクビだ!」と主張するべきだと声を荒らげると、その翌日には、昨季のNBA覇者であるゴールデンステイト・ウォリアーズ(Golden State Warriors)とエースのステフェン・カリー(Stephen Curry)に矛先を向けた。

 ウォリアーズのチームメートと同様に、トランプ大統領を痛烈に批判していたカリーは、チームがホワイトハウスに招待されても自分は訪問しない可能性があるとほのめかしていた。これに対してトランプ大統領はチームへの招待を撤回し、ツイッター(Twitter)に「ホワイトハウスへの表敬訪問は、チャンピオンチームにとって栄誉だと考えられている。ステフェン・カリーが躊躇(ちゅうちょ)しているようなので、招待状は取り下げる」と投稿した。

 トランプ大統領の怒りにまかせた言いたい放題の発言は激しい反発を呼ぶ結果となり、クリーブランド・キャバリアーズ(Cleveland Cavaliers)のレブロン・ジェームズ(LeBron James)はその先頭に立つ形で、「ばかだな。カリーはそもそも行かないことを明言している。だから招待なんて存在しない。あなたが現れるまで、ホワイトハウス訪問は名誉なことだった」と反論した。