■大量の薬を処方する医師や診療所「ピルミル」

 鎮痛剤を過剰に処方する医師がニュースとして取り上げられる中、専門家らは、オピオイド・クライシスが医師だけの責任ではなく、米国の医療制度そのものに問題があると指摘する。

 鎮痛剤の依存患者が増えるにつれ、その需要に対応すべく「ピルミル(Pill mill)」が米国内の各地に登場し始めた。ピルミルとは、大量の薬を処方する医師や診療所の呼称で、金銭さえ払えば誰でも薬を購入できるのが特徴だ。

 そのうちの一つが、オハイオ州の貧しい町ポーツマス(Portsmouth)にあった。以前は、他州との州境に位置するこの街に薬を求めて依存症患者が数多く訪れていたため、ピルミルは街の経済の一部を成していた。

 しかしその後、州政府や地元警察当局が介入してピル・ミルを閉鎖し、運営者の医師が逮捕された。また診療所に対しても、以降は信用ある医療プログラムとの提携が義務付けられた。

 オピオイド依存患者らは、合法的に処方された薬から依存症に陥った人々が多い。ポーツマスの依存症患者たちも、ある特定のグループに属しているということはなく、その社会的なバックグラウンドは多様だ。

 患者たちは中毒症状克服への長期間の補助を必要としていたため、地元当局は、医療サービスおよび依存症治療により一層力を入れた。その結果、それまで鎮痛剤依存症患者の避難所となっていた街は、依存症克服のための場所に生まれ変わった。

 この状況について、地元警察のロバート・ウェア(Robert Ware)署長は、米国の他地域に比べ、ポーツマスでは鎮痛剤過剰摂取が減少していると話した。

 米国では薬物の過剰摂取による死者が増加傾向にあり、2016年は6万人にまで上ったと推定されている。オハイオ州やウェストバージニア(West Virginia)州などで特にその数は多い。