■1968年以降の衰退

 だがこの業界は、1968年の学生運動の波とフェミニズムの台頭で廃れ、今日残っているのはヴィラ・ピエールフーのみだ。ネリ氏は「学生運動直後から受講者が激減しました」と語る。

 ヴィラ・ピエールフーが長く続いているのは、幅広く国際的な取り組みと、同校独自のテキストなど教材を常に更新する努力をしてきたからだとネリ氏は言う。受講者らは異なる20か国の適切な礼儀作法やエチケットを習得し、また避けるべき文化的タブーを学ぶ。

「文化的な相違を知らないために、非常にくだらない理由で衝突が生じることがあるのです」とネリ氏。例えば日本では人場で鼻をかむのは無作法だが、ドイツではそうしないことが無作法だ。

 また同氏は、ジャーナリストたちも同校で学べば「恥ずかしい」記事を書かないですむと言う。例えば、メラニア・トランプ(Melania Trump)米大統領夫人がサウジアラビア訪問中に、髪をベールなどで覆わなかったことを批判する記事があったが「サウジアラビアを訪れる非イスラム教徒には(髪を覆うことは)義務ではありません。だから彼女には必要ない。それが、しきたりなのです」。そのような微に入り細にわたる講習を楽しむ生徒もいれば、講習内容の濃さに驚く生徒もいる。

■エチケットの復活

 ポスト1968年世代と異なり、今の人々は同校で学んだことを誇りにしている。

 ここでの受講経験があるというフランス系レバノン人のナディン・アブ・ザール(Nadine Abou Zahr)さん(46)は、約20年前、まだ大学在学中に同校のことを初めて知ったという。当時は懐疑的だったが、同校での経験はこの上なく素晴らしいものとなったと話す。

「私の考えでは、良いマナーを学ぶことは見栄を張ることやうわべだけを取り繕うこととは違う。自分自身を尊重し、他の人に敬意を払うこと」とAFPのメール取材に語った。

 また講習の目的については、「劇的な」キャリアや人生を変えることではなく、文化的視野を広げ細部に注意を払う重要性を教えることだと思うと述べた。