【1月26日 AFP】陸上男子短距離のウサイン・ボルト(Usain Bolt、ジャマイカ)が、五輪で獲得した合計9個の金メダルのうち1つを失った。国際オリンピック委員会(IOC)は25日、2008年北京五輪のドーピング再検査の結果、4×100メートルリレーを制したジャマイカを失格処分にすると発表した。

 ジャマイカの金メダル剥奪により、ボルトは北京五輪をはじめ、2012年ロンドン五輪と昨年のリオデジャネイロ五輪で成し遂げた男子100メートル、同200メートル、そして4×100メートルリレーの「3種目3連覇」という前人未到の偉業のうち、1つが欠けることになった。

 同五輪で採取された数百件に上る検体の再検査で、ジャマイカチームの第1走者ネスタ・カーター(Nesta Carter)から禁止薬物メチルヘキサンアミン(methylhexaneamine)の陽性反応が出た。この薬物は鼻詰まりの薬として使用されていたが、現在はダイエットサプリメントに含まれていることで広く知られている。

 ボルトは昨年、カーターの問題が発覚した際に、「何年もかけて懸命に金メダルを集め、王者になるための努力をしてきたのに、胸が張り裂けそうだ。断腸の思いだけど、仕方がない」とコメントすると、「正式に違反が認められれば、返却しなければならない。それは自分にとって問題ではない」と話しており、ドーピングの撲滅を掲げる世界反ドーピング機関(WADA)と国際陸上競技連盟(IAAF)の賢明な努力をたたえていた。

 IOCは声明で、31歳のカーターから採取された検体の再検査で「禁止薬物のメチルヘキサンアミンが検出された」と公表。さらにIOCの懲戒委員会は同選手に対し、「2008年北京五輪に適用されるIOCの反ドーピング規則に準じ、反ドーピング規則に違反したことが判明した」との判断を下した。

 カーターは「男子4×100メートルリレーから失格」となり、メダルを取り上げられることになった。そして、短距離界の王者ボルトを擁するジャマイカチームも同様に失格処分を受け、獲得したメダルを返還せざるをえなくなった。同種目で2位に入ったトリニダード・トバゴが金メダルに繰り上がり、日本が銀メダル、ブラジルが銅メダルを手にすることになる。

 IAAFは同日、「2008年北京五輪の反ドーピング規則違反により、男子4×100メートルリレーでネスタ・カーターを失格処分とするIOCの訴えや、異議申し立てなどが決着すれば、IAAFは本件以外の同選手に関する制裁は、ジャマイカ陸上競技連盟(JAAA)に委ねる」という意向を示している。

 ジャマイカが世界新記録で金メダルを獲得したロンドン五輪の同種目にも出場していたカーターについて、IAAFはほかの大会で採取・保管された同選手の検体も再検査していくとしている。