【2月1日 AFP】トンガ史上初のアルペンスキー五輪選手になると思い立ったとき、34歳のカセテ・スキーン(Kasete Skeen)は最初は冗談のつもりだったと認めたものの、現在は生活環境を変えるほどの熱意を抱き、2018年の平昌冬季五輪を目指している。

 スキー競技とは縁遠い、穏やかな熱帯に位置する太平洋の島国トンガの五輪代表選手になるために、仕事を辞めてオーストリアに移住して現在はフルタイムで練習に臨んでいるスキーンは、「この旅を始めるまで、スキーは合計45日間しかしたことがなかった。ほとんどのスキー選手は、幼い頃からスキーを滑っているのに」と告白。ほんの12か月前までは建設プロジェクトの責任者として、地元の英ロンドン(London)で安定した生活を送っており、五輪選手になることなど考えたこともなかったという。

 スキーンは「コーヒーとロールアップ(手巻きたばこ)」で朝食を済ませたり、ジン・トニックでリラックスしながら泥酔したりすることが何より好きな一方で、ヨークシャー・プディングを食べることも欠かせない。

 そんな生活が一変したのは、ある晩に友人と夕食を取っていたレストランで、スキーシーズンの話題になったときだった。英国人の母親とトンガ人の父親を両親に持ち、ロンドンで生まれたスキーンは、スキーが好きで仕方がなかったから、トンガ代表として五輪を目指すつもりだったと冗談で話した。

 この考えが頭を離れなくなると、スキーンはクラウドファンディングで資金を募り、トンガの競技関係者に連絡。ジャマイカのボブスレー代表チームや、「エディー・ジ・イーグル(Eddie The Eagle)」のニックネームで知られるマイケル・エドワーズ(Michael Edwards、英国史上初のスキージャンプ五輪選手)の模倣と見なされることは明白だったが、本気で冬季五輪を目指していると訴え、夢をかなえるために100パーセントの力を注いでいる。

「いったん決意を固めたら真剣に取り組むようになり、前進するにつれて信念も強くなっていった」

 こうして彼は生活環境を変え、アルペンスキーの元イタリア代表コーチであるヘルマン・アイグナー(Hermann Aigner)氏の指導の下、厳しいトレーニングに専念することになった。