【9月27日 AFP】イタリア・セリエAのASローマ(AS Roma)で指揮を執るルチアーノ・スパレッティ(Luciano Spalletti)監督が、どれだけかたくなに「彼はチームの一員だ」と言い張ろうと、サポーターにとって今週、フランチェスコ・トッティ(Francesco Totti)がただの一選手であるはずがない。ローマ一筋で25シーズンを過ごしてきたトッティは27日、40歳の誕生日を迎えた。今季限りでの引退がささやかれているトッティだが、それでも試合に出場したときには、さびつかない魔法の技を見せつけている。

 25日にローマと対戦したトリノ(Torino FC)のシニシャ・ミハイロビッチ(Sinisa Mihajlovic)監督は、「私にとって、彼はこの25年間ずっとイタリアでナンバーワンの選手だ。彼は史上最高の選手の一人。今も衰えないあのボールさばきには驚くばかりだ」とコメントした。

 早熟の天才として名を馳せ、輝かしいキャリアを通じて「ローマの王」の名をほしいままにしてきたトッティは、チームが思うような成績を残せないことも多いなかで、一流選手にまで上り詰めた。そんなトッティの物語の締めくくりに、ファンはおとぎ話のようなハッピーエンドを期待している。

 1993年3月のブレシア(Brescia Calcio)戦で試合終盤に途中出場を果たし、ローマデビューを飾って以来、23年の月日が過ぎた。セリエAの絶頂期に、サッカーのスタイルが変化するなかで、トッティは自らを進化させ、適応し、変化を乗り越えてきた。そうした姿をもっと見直すべきだという声も、彼が最近になって打ち立てた道しるべの一つだろう。

 今年2月、欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2015-16)でローマと対戦したレアル・マドリード(Real Madrid)のクリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)は、トッティについて「彼は僕ら選手全員の手本で、誰もが尊敬すべき存在だ」と語っている。

「あれだけのレベルでプレーできるというのは、彼にとってはもちろん、サッカー界にとって、子どもたちにとっても素晴らしいことだ。彼は世界に、サッカーには限界なんてないということを示してくれている」

 1998年、革新的なズデネク・ゼーマン(Zdenek Zeman)監督の下で、アウダイール(Aldair Santos do Nascimento)からキャプテンマークを引き継いだトッティは、その期待に見事に応え、3年後の2001年にはクラブに18年ぶりとなるリーグ優勝のタイトルをもたらした。チームが勝てないときでも、トッティの驚異的な技術と決定力は相手チームを震え上がらせた。

 積年のライバルであるラツィオ(SS Lazio)を「ボコボコにした」ことは一度や二度ではない。2得点を記録した昨季の対戦では、クルヴァ・スッド(ホームゴール裏)のサポーターをバックに「自撮り」写真を撮影し、ニュースの見出しを飾った。

■「タイムマシンは買ってやれないが」

 トッティは25日のトリノ戦で、リーグ戦通算250得点という節目に到達した。トリノのゴールマウスを守っていたのはジョー・ハート(Joe Hart)。くしくも2年前、38歳と3日というチャンピオンズリーグの最年長ゴールを決めた相手も、マンチェスター・シティ(Manchester City)時代のハートだった。

 トッティが今後、シルヴィオ・ピオラ(Silvio Piola)氏が持つリーグ歴代最多記録の通算274得点を更新するのは難しいだろう。それでも、「トッティも一選手」と言い続けてきたストイックなスパレッティ監督も、11日のサンプドリア(Sampdoria)戦でトッティが同点ゴールをアシストし、さらに劇的な決勝点を決めたときには、脱帽といった様子でこう語っていた。

「チームにトッティが4人か5人いればね。彼を使わないといろいろな人からうるさく言われるんだが、私は彼のような選手をもう一人生み出したいんだよ。偉大な選手は1人じゃ足りない」

 サンプドリア戦でゴールを決めたトッティは、予想通りゴール裏へ駆け寄り、万雷の拍手を浴びながらユニホームを脱ぎ捨て、ベンチメンバー全員からもみくちゃにされた。本人は、「PKを蹴るのが怖くなったのはこれが初めてだよ。クルヴァの前で外すなんて許されないからね!」と話している。

 サンプドリア戦に限らず、今季のトッティは何度もチームを助けている。昨年9月以来のリーグ戦先発を飾ったクロトーネ(FC Crotone)戦では、スパレッティ監督の信頼に応え、エディン・ジェコ(Edin Dzeko)の今季初となる2得点を演出して4-0の大勝に貢献した。相手のDFラインの裏へ通した完璧なロングパスのアシストは、「あのひらめきは見事だ」と相手指揮官をうならせた。

 トッティの誕生パーティーが開催される今週、ファンは彼が成し遂げてきた偉業を何度も思い返すことになるだろう。招待されているスパレッティ監督は、「私がいると選手は落ち着かないだろうから」と、あまり会場に長居するつもりはないようだ。

 それでも指揮官は、「彼にタイムマシンを買ってやることはできない。だけどこの言葉で、私が彼をどう思っているかはわかるはずだ」と語った。(c)AFP/Justin DAVIS