【4月19日 AFP】フィリピン大統領選で犯罪との闘いを掲げ首位に立つロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)候補が、レイプ殺人の被害者となったオーストラリア人女性について冗談を言ったとみられる場面を撮影したビデオがインターネット上に公開され、同国駐在の豪大使やローマ・カトリック教会から非難の声が上がっている。

 動画投稿サイトのユーチューブ(YouTube)で公開されたビデオは、選挙集会で撮影されたもので、ドゥテルテ氏は自身が市長を務めるフィリピン南部ダバオ(Davao)の刑務所で1989年に起きた受刑者による暴動の際、刑務所に勤めていたオーストラリア人修道女がレイプされ殺害された事件について、次のように語っている。

「(受刑者らは)女性たちを全員レイプした。そこにこのオーストラリア人の修道女もいた…私は、彼女の顔を見て『ちくしょう。なんと気の毒な』と思った。彼らは彼女をレイプしたのだ。列を作って。彼女がレイプされたことに怒りが湧いたが、彼女は本当に美しかった。そこで思った。一番先に市長にやらせるべきだったんじゃないか、と」。ドゥテルテ氏がこう言うと、支持者たちからは笑い声が上がっている。

 ドゥテルテ氏のライバル候補や女性団体、インターネット上のコメンテーターなどは早速、同氏の発言を非難した。アマンダ・ゴアリー(Amanda Gorely)駐比豪大使はツイッター(Twitter)で「レイプや殺人は決してジョークにしたり、矮小(わいしょう)化したりしてはいけない。女性や少女に対する暴力は、時と場所にかかわらず許されざる行為だ」と批判した。

 また、フィリピン・カトリック司教協議会の会長を務めるソクラテス・ビジェガス(Socrates Villegas)大司教も、ドゥテルテ氏に対する批判の声に同調。問題のビデオをソーシャルメディア上に投稿した上で、「自分の目で観て判断してほしい。私の考えは自分の中にとどめておきます」とのコメントを添えた。

 一方のドゥテルテ氏は、こうした批判の声に全く動じない構えを見せている。ユーチューブで公開したビデオの中で、発言はジョークではなかったと主張。美しい女性を「私より先に奪った奴らは皆殺しにしたい」と述べ、「これは男性的な語り口なだけだ」として、謝罪を拒否している。

 5月9日に行われる大統領選で勝利した際には犯罪容疑者を一斉に殺害すると誓っているドゥテルテ氏は、下品な話を織り交ぜたスピーチや、自身の女性経験についての自慢話などで、多くのフィリピン人に人気がある。フィリピンは敬虔なカトリック国だが、ドゥテルテ氏が昨年11月に行った演説の中でカトリック教会のフランシスコ(Francis)法王を卑語で呼んだときにも、支持者は早々に同氏を許していた。(c)AFP