【1月23日 AFP】昨年12月にチリ南部パタゴニア(Patagonia)地方でカヤック事故により死亡した米アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス(The North Face)」の共同創業者、ダグラス・トンプキンス(Douglas Tompkins)氏が保有していた広大な自然保護区を、同氏の妻がチリ政府に寄贈する意向であることが22日の報道で明らかになった。

 72歳で亡くなった同氏の妻、クリスティーン・マクダビット(Kristine McDavitt)さんは、森林や希少な花々が生息する土地40万ヘクタールを一般公開できるよう、チリ政府に寄贈する意向を伝えたと明かした。

 チリの現地紙ラ・テルセラ(La Tercera)に対し、マクダビットさんは21日にチリのミチェル・バチェレ(Michelle Bachelet)大統領と会見した際に寄贈を申し出たと話し「われわれが連携し、チリ政府にこの寄贈が受け入れられれば、世界で最大規模の私有地の譲渡になる。すべての国の人々にこれらの場所を訪れてほしい」と語った。

 慈善家でもあったトンプキンス氏が、1990年代にチリ南部とアルゼンチンで広大な土地を購入した際には賛否両論が起きた。

 熱心なアウトドア愛好家だったトンプキンス氏は、共同創業したザ・ノース・フェイスともう一つの服飾ブランド「エスプリ(Esprit)」の保有株を売却し、25年前にチリへ移住した。同氏が作った自然保護区の数々は、環境の観点からも、観光面からもチリとアルゼンチンの両国で成功していると広く称賛されてきた。

 一方でトンプキンス氏の自然保護事業は、アウグスト・ピノチェト(Augusto Pinochet)元大統領による17年間の独裁時代からようやく脱したチリ国内で強力に敵視されるようになった。元チリ内相のベリサリオ・ベラスコ(Belisario Velasco)氏は、トンプキンス氏が土地所有者たちに対し安値で土地を売るよう圧力をかけていたと非難したことがある。(c)AFP