■危険な旅、多くは女性と子供

 毎日、テントの中に閉じ込められ、エバリナさんは「司令官の妻として」扱われた。2か月後、戦闘が基地に迫って来た時にようやく解放されたが、家族と再会した国連の施設で自分が妊娠していることを知った。家族と南スーダンから国境を越え、760キロを移動してスーダンのハルツームへ逃れてまもない今年4月、エバリナさんは女の子を出産した。

 南スーダンの戦闘は13年12月に勃発。リヤク・マシャール(Riek Machar)前副大統領がクーデターを企てたと、サルバ・キール(Salva Kiir)大統領が非難したことをきっかけに、民族間の暴力の連鎖が始まった。国連によると、これまでに数万人が死亡、60万人超が近隣諸国への避難を余儀なくされた。

 エバリナさんの家族は、11年に南スーダンがスーダンから分離独立する前までハルツームで暮らしていた。南スーダンからスーダンへ避難する人の大半は女性と子供だ。エバリナさんの父親は14年に行方が分からなくなった。UNHCRハルツーム支部のアンジェラ・リ・ロシ(Angela Li Rosi)氏は「危険の多い旅の途中、女性たちは身体的暴力を含む辛い体験をしているだろう」という。

 UNHCRは今年5月、南スーダンで性的暴力を受けた女性を支援するプログラムを地元のNGOと共同で立ち上げた。これまでに南スーダン出身の8人と、エチオピアやエリトリア、イエメンからスーダンに逃れて来た数十人の支援にあたった。ケースワーカーのマリア・サビル(Maria Sabir)さんは女性たちと面接し、医療検査を手配した後、カウンセリングを勧める。カウンセリングは3か月間、週2回のペースで行われる。

 UNHCRは押し寄せる南スーダンの人々に対応するための資金調達で厳しい状況に置かれており、エバリナさんが受けたようなプログラムも制限されている。リ・ロシ氏は「南スーダンの危機は、シリアやイエメンなど他の多くの危機が起きているのと同じ時期に起きた。資金調達で競争が起きている」と説明した。

 エバリナさんは「カウンセリングを受けることができてとても嬉しい。支援してくれた人たちに感謝している」と話した。だが、兄弟や生まれたばかりの娘を支えなければならず、新たな問題に直面している。薬剤師になるために勉強するという夢があったが、今は家族を養うため、必死に仕事を探しているところだ。(c)AFP/Tom Little