■同胞との出会い、死別

「ひょろひょろひょろひょろ、歩いてくる。佐藤さんか、といったら、そうだあ、原田君だねえ、そうだ、どうしたんだ、って聞いたらね。俺の飛行機が200メートルばかり向こうに、ヤシの木(が)折れて巻きついちゃったんだ。それで、真ん中に乗っている中尉の人は、頭(を弾が)寛通縦走だから、もう1発で亡くなったからいいけれども、一番後ろに乗っている(兵士)が、飛行機がヤシに巻きついた、そこへ大腿部をはさまれちゃって、苦しんで取れない。それで、俺一生懸命やってみたけれど、あの大きな3人乗りの飛行機が巻きついちゃったから、もういけない。それならどうだ、2人で行ってやってみるか」

「それで2人で行った。そしたらなるほど、苦しんでいるんだけれどもね、3人や3人であの飛行機が動かない。だから、これ2人じゃだめ。じゃあ、上から見たときに、住民のうち(家)がだいぶあったから、あそこまで行って、言葉は通じないけれども、頼めばなんとかなるだろう、頼んで、ロープかなんかで引っ張ってみよう。2人で相談してたの」

「そしたら、彼が、佐藤さん、俺もう、諦めた、と。そしたら私はね、冗談じゃないよ、これから2人で助けようと思っているのに本人が諦めることないじゃないか」

「それで、もし飲み物がないなら、ここにヤシの実があるから飲んでろ、いや、私はもうこういう足になっちゃって、もし(飛行機から)取ってもらっても、密林の中で医療もないところで動けない。うっ血もしてる。それより俺はもうここで諦めるから、それよりも佐藤さんに、自分の髪の毛と爪ととって、おっかさんのところへ持って行って、ここでこういう死に方をしたという報告をしてくれ、そういうことを言い出したらね、今までさかんにヤシの実の水を、私が穴あけてあげたら飲んでいるのに、順に顔色が、どんどんどんどん血の気がなくなって、数分で、がくっとなっちゃった」

「ああ、もうしょうがない。これも死んだ、これも死んでいる。それじゃ2人で今夜は、われわれもどうなるか分からないんだから、ここでお通夜をしよう。それで通夜をするには、そこらの草花を少しもってきて、ヤシの実を拾ってきて、並べて、そこへ2人で寝よう。それで寝てた」