■地域住民からは強い反対の声

 近代的で便利な新スタジアムの構想は、2012年にダニエル・アンヘリチ(Daniel Angelici)氏がクラブ会長の座に就いたことで持ち上がった。アンヘリチ氏は、元クラブ代表で、大統領選の出馬もうわさされるブエノスアイレス市長、マウリシオ・マクリ(Mauricio Macri)氏と懇意にしている。

 しかし、計画が進行し、ラ・ボカ地区の2つの空き区画をクラブに売却する法案が地元議会を通過すると、地域住民は反対の声を上げ始めた。

 アルゼンチンのクラブサッカーの「聖堂」の外で、観光客に土産物を売って暮らすエドゥアルド(Eduardo)さんは、「ボンボネーラの拡張の話はいつもあったが、新築は考えられない」と話した。

 犬の散歩でクラブの練習場にやって来た近くのササーナ・ディアス(Susana Diaz)さんは、「地域の人間も利用できる複合スポーツ施設を作るべきよ。新しいスタジアムなんかほしくない!」と語った。

 土地購入の議案を地元議会に持ち込んだのは、オスカル・モスカリエッジョ(Oscar Moscariello)氏だ。モスカリエッジョ氏はクラブの副会長であり、マクリ氏が率いる保守派野党「共和国の提案(PRO)」の議員でもある。

 スタジアムの近隣住民で作る団体「イラーラ通り住民の会」をまとめるシルヴァーナ・カンツィアーニ(Silvana Canziani)さんは、「ボカ・ジュニアーズに関係のある議員たちが、土地の購入を認める法案に賛成するなんて、とんでもないことです」と話した。

 カンツィアーニさんは、「そんな行動は慎むべきだった。人として最低です」と述べ、土地は近隣住民のために使うべきだと訴えた。

■「ボンボネーラを離れない」

 2008年から2011年まで、ボカの会長を務めたホルヘ・アメアル(Jorge Ameal)氏も、「ボンボネーラの解体や、サッカー以外の利用に賛成している人間など、どこにもいない」と話した。

「そんなことを思いつけるのは、クラブに愛着がない人間だけだ。イタリア・ローマ(Roma)のコロッセオ(Colosseum)を壊そうという人など、どこにもいないだろう」

 現在、「ともにボカのために」という名の団体を率いるアメアル氏は、来年行われるクラブの会長選で返り咲きを狙っている。うまくいけば、スタジアムの新築ではなく、座席を増やす改装を提案するという。

 ボカの熱烈なファンも、考えは同じだ。2014年のリーグ最終戦では、「俺たちはボンボネーラを離れない」と書かれた無数の横断幕がスタジアムに躍った。

 同様の抗議は、議会の前、さらにはインターネットでも行われている。ツイッター(Twitter)では、「ボンボネーラに手を出すな」という意味のハッシュタグが拡散され続けている。(c)AFP/Liliana SAMUEL