【11月11日 AFP】9歳の少女が主演する、内戦下のシリア・アレッポ(Aleppo)の反体制派地区での日常生活をほろ苦いユーモアをこめて描いたコメディードラマが、動画共有サイトのユーチューブ(YouTube)で話題だ。

 一躍ネットのスターとなったラシャ(Rasha)ちゃん(9)は、コメディーショー『ウム・アブド・ハラビヤ(Umm Abdo al-Halabiya)』で、3年以上に及ぶ内戦によって荒廃したアレッポを舞台に連日の空爆や物資不足のなか家庭を切り盛りする主婦を演じている。

 全30話のシリーズに出演するのは子どもだけ。ラシャちゃん演じる主婦ウム・アブドをはじめ、内戦下に暮らす近所の住民たちや戦闘員たちも全員、子どもが演じている。撮影は、かつてシリア経済の中心地として栄えたアレッポ市内で行われた。

■9歳が風刺するシリアの日常

 主役の主婦ウム・アブドは、バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領に対する不満をぶちまけるかと思えば、アサド政権打倒を掲げる反体制派の戦闘員らも容赦なく批判する。また、往々にして威圧的なシリアの社会規範を冷笑もする。

 わずか9歳にしてラシャちゃんは、シリアコメディーの特徴である風刺精神を醸し出しており、ゴシップに明け暮れる典型的なシリア女性を完璧に演じきっている。脚本は反体制を貫いており、アレッポの反体制派地区における日々の現実をうかがい知ることのできる初の番組となっている。

 たとえば、あるエピソードでは、アレッポ市内のアサド政権側が掌握する地区に住む妹と電話中のウム・アブドが、政府の支配地域でも断水が日常的になりつつあると聞き「あんたも手で洗濯しているの?あんたたちみたいなアサド支持者は、甘やかされているんだとばかり思っていたわ」と皮肉を言う。

 別のエピソードでは、反体制派戦闘員である息子の嫁を探している女性がウム・アブドの家を訪ねてくる。ウム・アブドは近隣住民の間では娘を反体制派にしか嫁がせないことで有名で、「娘婿たちは全員、自由シリア軍(Free Syrian Army)のメンバーなんですの」と自慢する。嫁探し中の女性は「理想的だわ!うちの息子は狙撃の名手なんですのよ」と応じ、縁談はまとまるかに見えた。だが、ウム・アブドが持参金は米ドルか金塊でと言い出したことから、破談となってしまう。