■「抵抗の象徴」

「ユーモアは直接、心に響く」から、アレッポの悲劇的な日常を描く手段としてコメディーを選んだ――ディレクターのバッシャール・ハディ(Bashar Hadi)氏は、AFPの取材にそう語った。既に18万人以上の犠牲を出した内戦の中でも「人々の悲しみを打ち砕き、笑わせたかった」という。

 アレッポは、反体制派が本格的な反転攻勢に出た2012年7月以来、アサド政権側と反体制派のそれぞれが掌握する地域に二分されている。反体制派地区を拠点とするハディ氏は、シリア国民の苦しみを「反体制派の人々だけでなく、アサド支持者やアラブ諸国、欧米の人々にも同じように伝えられるよう」、子どもを出演者とすることを決めたのだそうだ。

 ラシャちゃんは「内戦に巻き込まれたシリアの子どもたちを代表する存在であり、抵抗の象徴ともなった」とハディ氏。

 撮影は危険と隣り合わせで、「何度も砲弾が近くに落ちてきて、撮影を中断したり、延期したりした」という。反体制派地区への電力供給は途絶えて久しく、撮影機材の電源は発電機や車のバッテリーが頼りだった。

『ウム・アブド・ハラビヤ』は、イスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」期間中に大ヒットした。現在、中東諸国のテレビ局と放映の交渉が進んでいるという。(c)AFP