■ロックアウトやマジックのHIV告白など、さまざまな問題を対処

 スターン氏は波乱時代のかじ取りにも迫られた。労使交渉が金銭問題で決裂してロックアウトとなり、1999年と2011-2012年シーズンは縮小を余儀なくされた。その一方で、サラリーキャップ制度や、ぜいたく税を導入して年俸の高騰を抑え、チームの均衡化も図った。

 また、インディアナ・ペイサーズ(Indiana Pacers)とデトロイト・ピストンズ(Detroit Pistons)による観客を巻き込んでの乱闘事件や、審判のティム・ドナフィ(Tim Donaghy)が賭博に関与する事件が起きた際には、イメージダウンの歯止めに努めた。

 1991年にマジック・ジョンソンがHIV感染を告白した時にも、スターン氏は彼を支えた。

 1980年代には禁止薬物を使用した選手を永久追放し、リーグのクリーンなイメージを保持した。さらにドレスコードも設けて、ジョーダンを筆頭にNBA選手をファッション誌「GQ」のスターのごとくカリスマ的存在に仕立て、市場にアピールした。

 スターン氏は、「かつてNBAの選手は正当な扱いを受けていなかったが、現在はコートの内外で尊敬されるようになったことを誇りに思う」と述べた。

 29日には、デビッド・レターマン(David Letterman)の米人気トーク番組に出演し、コミッショナーとして学んだことのリストを冗談まじりに読み上げるコミカルな一面を見せた。

 そのなかには、「国際外交が必要な時は、デニス・ロッドマン(Dennis Rodman)を呼べ」、「マスコットの最低賃金は年間500万ドル(約5億円)以上に設定した」、「私は創造性に欠けるが、とにかく活発などこにでもいる子供だ」、「寝ていてもスニーカーのきしむ音が聞こえる」などの項目があった。

 スターン氏が科した最後の罰金は、1月18日にコート上で審判を批判したダラス・マーベリックス(Dallas Mavericks)のオーナー、マーク・キューバン(Mark Cuban)氏に対する10万ドル(約1000万円)だった。

 これまで20回の罰金処分を受け、合計190万ドル(約1億9000円)を支払ったキューバン氏は、「しかるべき別れをせずに、コミッショナーを退任させることはできなかった」とコメントしている。(c)AFP/Jim SLATER