北欧伝統のトナカイ遊牧、鉱山開発で危機に スウェーデン
このニュースをシェア
■経済効果か、伝統か
ローンベックのある村は今年9月、国連(UN)の人権理事会に嘆願書を提出した。この村を始め、鉱山開発で影響を受けるサーミの村々を代表するマティアス・アーレン(Mattias Aahren)氏は、鉱山はいずれも「トナカイの放牧にとって、考え得る限り最悪な場所に位置する」と非難する。
だが、英鉱山会社ベオウルフ(Beowulf)傘下のヨックモック・アイアンマインズ(Jokkmokk Iron Mines、Jimab)のフレッド・ボーマン(Fred Boman)最高経営責任者(CEO)は、サーミ人たちは懸念を誇張していると反論。鉱山計画がスウェーデン政府から承認されることに自信を示した。
ボーマンCEOは、AFPの取材に「ここの鉄鉱石は硬く、埋蔵量も多い。経済的な価値は地元のトナカイ放牧とは比べものにならない」と指摘。その上で「もちろん、(トナカイ放牧の)文化的価値は重要だ。われわれは共存できると確信している」と述べている。
鉱山開発を推進する人々は、失業率の高い地元コミュニティーに鉱山が雇用を創出すると主張する。新しい鉱山は人口5000人のヨックモックに、500人分の雇用を少なくとも14年間継続して生み出すというのだ。
だが地元のサーミ人活動家は、「スウェーデン政府は300年にわたってこの地域を植民地化してきた。その土地は、サーミが数千年間使ってきた土地だ」と述べ、一種の搾取が続いているだけだと一蹴した。(c)AFP/Anna-Karin LAMPOU