【8月12日 AFP】4000年以上前の古代メソポタミアで製作されたとされる謎の多い石製の頭部が、ドイツから贈られた胴体の複製に一致したと、関係者が11日明らかにした。この照合作業は、サダム・フセイン(Saddam Hussein)政権に対する制裁措置やイラク戦争により長らく実現がかなわなかった。

 アッカド帝国(Akkadian Empire)時代のものと見られる石製の頭部は1982年、イラクのアッシュル(Ashur)でイラクの考古学者らにより発掘された。同地では1905年、高さ1.37メートルの閃緑岩の胴体がドイツの考古学者により発掘されていた。

 同じ場所で似た色の石製の頭部が発見されたことを知ったドイツの専門家らは、胴体の首と肩の「型」をとってバグダッド国立博物館(Baghdad Museum)に送付。これらの型と頭部が一致することが確認された。

 1990年代初頭には、両国の専門家が、それぞれが所有する頭部と胴体の複製を作成して交換し、それぞれが完全な一体を保有することで合意。しかしフセイン政権への国連(UN)の制裁措置や2003年の米軍による進攻、その後の政情不安でこの計画は立ち消えになっていた。

■イラクとドイツが複製を交換

 計画は、前週になりようやく実現された。セレモニーで、ベルリンのペルガモン博物館(Pergamon Museum)が所有する胴体の複製がバグダッド国立博物館に授与され、同博物館は頭部の複製を返礼した。なお、胴体の実物は1926年からベルリン王立博物館(Berlin Royal Museum)で展示されている。

 この像は、紀元前23世紀から21世紀にチグリス(Tigris)とユーフラテス(Euphrates)川流域に栄えたメソポタミア文明の遺物のなかでも最も保存状態が良いものの1つ。台座に立って衣装をまとった姿は、王か統治者を表していると考えられるが、碑文がないため人物は特定できない。

 なお、サダム政権崩壊後には混乱に乗じておびただしい数の文化財が略奪されたが、この頭部は無事だったことに、バグダッド国立博物館の関係者は胸をなでおろしている。(c)AFP/Sammy Ketz