【3月29日 AFP】アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは28日、ドキュメンタリー長編賞を受賞したパレスチナ人監督がイスラエルの入植者に襲撃されたとする事態を受けて同監督を擁護しなかったことを謝罪し、アカデミーが黙殺していると批判した映画俳優らアカデミー会員への声明を発表した。

映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の共同監督の一人で、パレスチナ人のハムダーン・バラール氏は、24日に占領下のヨルダン川西岸で入植者に襲撃され、その間、イスラエル兵に武器を向けられ、拘束されたと主張。25日に釈放された後、「残忍な」攻撃を受けたのは「自分がアカデミー賞を受賞したからだと思った」とAFPのビデオインタビューで語っている。

他の多くの著名な映画製作者グループは直ちに声明を発表したが、アカデミーは当初、声明を発表しなかった。

26日にアカデミー会員に声明文を送ったが、「作品や見解のためにアーティストを傷つけ、抑圧する行為を非難する」としながら、バラール氏の名前には言及していなかった。

これに対して、アカデミー会員は独自の署名活動を展開。28日午前までに600筆以上の署名を集めた。

「3月最初の週にアカデミー賞を授与しながら、その数週間後に同作の映画製作者を擁護しないのは弁解の余地がない」とアカデミーを批判し、「私たちは、オスカーを受賞したパレスチナ人監督のハムダン・バラール氏がヨルダン川西岸で入植者とイスラエル軍によって受けた残虐な襲撃と不法な拘束を非難する」と表明した。

署名には俳優のホアキン・フェニックスさん、ペネロペ・クルスさん、リチャード・ギアさんらも加わっている。

アカデミーは同日、臨時会合を開き、その後、バラール氏と「先日のわれわれの声明には支援が欠けていると捉えたすべてのアーティスト」に謝罪。

「バラール氏と映画名について直接言及しなかったことを遺憾に思う」と表明した。(c)AFP