【5月10日 Xinhua News】中国で初めて動物の細胞を使った「培養肉」を作ることに成功した江蘇省の南京農業大学で、培養肉の量産化に向けた研究が進められている。

 研究を主導するのは、同大の肉品質制御・新資源創出全国重点実験室で主任を務める周光宏(しゅう・こうこう)特任教授。「将来的に、ブタを飼育しなくても『豚肉』が食べられるようになる」と話す。3Dバイオプリント技術が日増しに進歩しており、形状のほか赤身と脂肪の割合も好みに合わせて調整できるという。

 周教授によると、培養肉は動物の細胞を体外で培養して作る「食べられる肉」で、飼育や食肉処理の必要がなく、食感や風味もコントロールできる。タンパク質や脂肪の含有量を人工的に調整したり、飽和脂肪酸の成分を減らすことも可能。製品発売前に関係部門の審査と認可を経ることで安全も確保される。

 周教授の指導で設立された培養肉のスタートアップ、南京周子未来食品科技の丁世傑(てい・せいけつ)最高経営責任者(CEO)は、動物の幹細胞をバイオリアクター(生物反応器)にセットして、足場と培養液によって細胞を増やしていくことで「肉」に成長すると説明した。

 中国初の培養肉が誕生したのは2019年。周教授率いるチームが豚肉5グラムを培養した。昨年は培養肉5キロの生産に成功している。周教授は「研究は最終段階に来ており、業界は間もなく大きな変化を迎えるだろう。われわれは今、培養肉を実験室から生産ラインに送り出すため急ピッチで取り組んでいる」と語った。

 ドイツの調査会社スタティスタは、40年までに世界の肉製品市場は通常の動物肉が40%、培養肉が35%、植物肉が25%を占めるようになると予想する。

 培養肉の産業化が進めば、炭素排出の大幅削減、エネルギーや水資源、土地資源の消費低減に加え、生産サイクルの大幅短縮が可能になる。周教授は「ブタやウシの飼育には数カ月から数年かかるが、培養肉の量産が始まれば、生産サイクルは数週間にまで短縮する」と説明した。

 周教授によると、培養肉は発展の初期段階にあり、商業化もされていないが、農業農村部が発表した「全国農業農村科技発展規画(2021~25年)」に「人工たんぱく質」など新型食品の研究開発が盛り込まれており、研究者の自信を倍増させている。ここ数年、国内の科学研究機関やスタートアップが政府の関連部門と積極的に意思疎通を図っている。

 丁氏は、技術の最適化と産業規模の拡大に伴い、培養肉の生産コストはさらに下がると指摘。「13年に国外で初めて作られた培養肉ハンバーガーのコストは33万ドル(1ドル=約156円)だったが、今は1キロ当たり数千元(1元=約22円)。間もなく1キロ千元以下まで下がるだろう」と語っている。(c)Xinhua News/AFPBB News