【4月30日 AFP】南米ウルグアイのホセ・ムヒカ(Jose Mujica)元大統領(88)は29日、首都モンテビデオで記者会見し、先週受けた健康診断で食道に腫瘍が見つかったと公表した。元左翼ゲリラのムヒカ氏は2010~15年の在任中は収入の大半を寄付し、「世界で最も貧しい大統領」と呼ばれた。

 ムヒカ氏は、免疫疾患があるため放射線治療や手術は困難だとし、「死に神に取りつかれるのは初めてではない」が、「今回は大鎌を携えてやって来たらしい。しばらく様子見だ」と語った。

 主治医は、腫瘍が悪性かどうかは現時点では判断できず、治療法もまだ確定していないと説明した。

 ムヒカ氏は、在任中は質素なライフスタイルも話題となり、カルト的な人気を博した。革新的な法制定に尽力し、人工妊娠中絶や同性婚、2013年には世界で初めて嗜好(しこう)用大麻の使用についても合法化を実現した。

 一方で、ムヒカ氏が所属していたゲリラ組織ツパマロス(MLN-Tupumaros)をめぐっては、1973年の軍事クーデターを引き起こし、1985年まで続く独裁政権を招いたとして、非難にもさらされた。ムヒカ氏はその間、12年にわたり獄中生活を送った。

 新型コロナウイルス感染が流行していた2020年に上院議員を辞職。政治の第一線から身を引いた。

 会見では若者に向け、「人生は美しく、そして限りあるものだと伝えたい。人生で成功する秘訣(ひけつ)は七転び八起きだ」と語った。常に憎しみより愛を選ぶよう呼び掛けた。

 自身については、人生に感謝していると話し、「これまで過ごしてきた良い時間は誰にも奪えない」と結んだ。(c)AFP