【4月25日 CNS】中国西南部の広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)柳州市(Liuzhou)には、少数民族チワン族の伝説の民謡「山歌」の歌姫、劉三姐(Liu Sanjie)が魚に乗って昇天したとされる魚峰山がある。いまではネット上で有名になった歌手たちがライブストリーミングのために集う場所になっている。

 中国のショート動画フォームで数百万人のファンを持つ歌手の山三妹(Shan San Mei)さんは、十数台のスマートフォンの前で民謡「山歌」を情熱的に歌ってライブ配信した。彼女の後ろでは、大勢の若い弟子たちも交代で歌った。

「民謡を歌うのはとても楽しいです。広西チワン族自治区の豊かで多彩な文化も体験できますから」と山三妹さんから民謡を習っているインドネシア人留学生のマヘルさんが語る。

 山三妹さんの本名は偉莉莉(Wei Lili)さんといい、柳州市融水ミャオ族自治県(Rongshui Miao Autonomous County)の山歌の歌手だ。子供の頃から映画『劉三姐(Liu Sanjie)』が好きだったという彼女は、山岳部で育ったので「現代の劉三姐」になりたくて、「山三妹」という芸名を名乗った。

「当時、民謡は高齢者の歌うものと笑われました。でも、インターネット上で民謡を歌うと多くの視聴者が集まってくれたのです」

 2021年に民謡を歌って50万人の同時視聴を記録した山三妹さんは、「広西チワン族の民謡王」と呼ばれた陸連芳(Lulianfang)さんのもとで体系的に民謡を学ぶことになる。

「最初はインターネット上にある民謡の歌詞に合わせて歌うことしかできませんでしたが、師匠に教えてもらってからは民謡の作曲もできるようになりました。今では民謡と現代の生活を組み合わせて民謡を作っています」

 広西チワン族自治区ではその昔、民謡は若い男女が想いを寄せる相手に恋愛感情を伝え合うためのツールだった。しかし、社会の発展とともに民謡は徐々に「恋愛ツール」としての機能を失い、若者から遠ざかってしまっていた。

 それが、インターネットの台頭により、若い世代が民謡を復活させたのだ。中国のSNS上では、多くの「山歌」歌手がライブ配信をするようになった。

 山三妹は陸連芳さんに師事して民謡を習った後、師匠の陸さんにライブ配信の方法を教えたことがきっかけになって、陸さんもまた、ライブ配信のプラットフォームで毎日民謡を歌い始めたのだ。

 民謡はユーモラスでSNSの視聴者が好むタイプの音楽だ。忙しい日常の中で、若者たちは民謡でストレスを解消し、自然に戻りたいと願っているのかもしれない。山三妹はこれまでに何百人もの弟子を受け入れてきたが、そのほとんどは2000年以降に生まれた若者たちだ。

 民謡は経済的価値も生み出しましている。 山三妹さんは「最近は毎日4時間以上ライブ配信をしており、最高月収は数万元(1元は約20円)です」と明かす。

「多くの人が弟子入りしてきました。最初は民謡を歌えばお金が稼げると考えているようでしたが、次第に民謡を歌うことに夢中になっていきましたね」

 近年、柳州市は毎年、各少数民族の歌手100人近くを招待して、コンサートを開くなど、民謡による町おこしに力を入れている。(c)CNS/JCM/AFPBB News