【4月24日 CNS】宮崎駿(Hayao Miyazaki)監督の新作映画「君たちはどう生きるか(The Boy and the Heron)」が中国本土の連休である清明節(4月4~6日)で興行収入1位を獲得し、現在の興行収入が5億元(約107億円)を突破する大ヒットになっている。

 映画は、母親を亡くした若者のファンタジーな冒険物語だ。ただし、この映画は商業的な超大作ではなく、物語は比喩に満ちていて、決して大衆受けする内容ではない。それにもかかわらず、優れた興行成績を達成したことは特筆に値するだろう。

 中国のオンラインチケット購入プラットフォームによると、この映画の清明節興行収入は4億元(約85億円)近くに達し、2位の『ゴジラxコング 新たなる帝国(Godzilla vs Kong: The New Empire)』の2億3500万元(約50億円)を上回った。清明節の興行収入としては、前年同時期に公開された映画『レディ・プレイヤー1(Ready Player One)』を上回り、歴代最高額になった。

 中国のSNS上では映画を巡って幅広い議論が巻き起こっている。 タイトルの『君たちはどう生きるか』などが検索ワードの上位となったほか、ペリカン、オウム、積み木など映画に出てくるイメージの背後にある意味を読み解く議論も盛り上がっている。

 中国のネットユーザーたちは「80代の宮崎監督が人生の曲折を経て、自身の人生経験を架空の物語に投影し、真摯(しんし)に自己分析し、深い洞察を描いたものだ」と信じている。

 映画の公開前に、スタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫(Toshio Suzuki)氏が映画のプロモーションのために上海市を訪れたが、ジブリのクリエーティブチームがプロモーションを行ったのは中国だけだったということも注目に値する。中国では、宮崎監督は中国文化に造詣が深く、大学時代には中国語を専攻したことも知られている。

 浙江伝媒学院(Communication University of Zhejiang)准教授で国家アニメーション教育研究基地の常務副所長である雷濤(Lei Tao)氏は「日本のアニメーション関係者の多くは中国の伝統文化や美的嗜好の影響を受けてきた。ジャッキー・チェン(Jackie Chan)の映画や『西遊記』が世界的に有名な鳥山明(Akira Toriyama)氏の作品『ドラゴンボール(DRAGON BALL)』を生み出すインスピレーションの源となったのは有名な話だ」と話す。

 中国本土では宮崎監督の『ハウルの動く城(Howl's Moving Castle)』が4月30日に再上映される予定だ。この映画が2004年に公開されてから20年が経ったが、中国本土で正式に劇場公開されるのは今回が初めてである。(c)CNS/JCM/AFPBB News