【4月23日 AFP】中国の競泳選手23人が、2021年東京五輪前のドーピング検査で陽性となりながら五輪出場を認められていた問題で、世界反ドーピング機関(WADA)は22日、事実を隠蔽(いんぺい)していたとの疑惑を否定し、疑いの目に「必要ならばいかなる措置」も辞さない姿勢を示した。

 中国の23選手は前週、東京五輪前の検査で禁止薬物のトリメタジジン(Trimetazidine)に陽性反応を示していたと報じられた。トリメタジジンは狭心症の処方薬だが、運動能力を向上させる作用がある。

 報道を受け、米国反ドーピング機関(USADA)のトラビス・タイガート(Travis Tygart)最高経営責任者(CEO)は、WADAと中国反ドーピング機関(CHINADA)が「現在までこれらの陽性結果を隠していた」と猛抗議し、「隠蔽の可能性」を指摘した。

 中国側の調査では、2020年末から2021年の年初にかけて行われた大会で選手たちが知らずに違反物質を摂取したと結論づけられており、WADAはこの報告に基づいて処分は下さなかったと説明している。問題の選手たちの中には金メダルを含むメダリストもいると報じられ、その多くは今夏のパリ五輪への出場が予想される。

 WADAのウィトルド・バンカ(Witold Banka)会長は、オンライン会見で「現時点で私が言えるのは、全ての段階においてWADAが正当な手続きを踏み、この問題に関する全ての項目を念入りに調査したということだ」「今もう一度やる必要があるのなら、われわれは全く同じことをするだろう」とコメント。「不正行為だという信頼できる証拠」は得られなかったと明かし、調査を開始するための基準を満たさなかったと説明した。

 WADAにはスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴してCHINADAの決定に異議を唱える選択肢もあり、過去にはそうした動きを起こしたこともあったものの、バンカ会長はこの件ではその選択肢はなかったと述べた。

 WADAの法務担当を務めるロス・ベンツェル(Ross Wenzel)氏も、このケースでCASに訴えたとしても勝訴の可能性は「ゼロに近い」ものだったとの見解を示し、USADAやメディアの報道に対して「必要ならばいかなる措置も取る」と語った。(c)AFP/Simon EVANS