【4月22日 AFP】中国の競泳選手23人が、2021年東京五輪の前にドーピング検査で陽性が発覚しながら、五輪に出場していた問題で、中国水泳協会(CSA)と長年仕事をしているオーストラリアのベテランコーチが、国家規模の組織的なドーピングだとの意見に反論し、「私の見てきた限り」そうした事実はないと断言した。

 今週末に水泳界を揺るがしたこの件では、国内大会の検査で23人に禁止されているトリメタジジン(Trimetazidine)の陽性反応が出たが、世界反ドーピング機関(WADA)は、選手たちがトリメタジジンの混入した食べ物から意図せず同物質を摂取したという中国側の調査結果を受け入れ、処分は下さなかった。

 23人の中には金メダルを含むメダリストもいると報じられ、その多くは今夏のパリ五輪でも上位を争うことが予想されている。

 これに対して、豪競泳指導者のデニス・コッテレル(Denis Cotterell)氏は22日に公開されたシドニー・モーニング・ヘラルド紙のインタビューで「組織的なものだったというあらゆる推測」を否定。五輪に向けた中国の国内選考会が行われている会場から電話取材に応じ、「卑劣な行為ではなかったと自信を持っている。そんなふうにはまったく思わない。思っていたらここには来ない」「自分の選手たちを全面的に支持する」と述べた。

 WADAは「信頼に足る証拠を欠く」ことを理由に中国側の見解に異議を唱えなかったが、米国反ドーピング機関(USADA)は今回のニュースを「衝撃的」と表現し、「クリーンなアスリートに対するひどい裏切り」だとWADAの対応を非難している。

 それでも、五輪で複数の金メダルを獲得したグラント・ハケット(Grant Hackett、オーストラリア)や、ドーピング違反で名声が地に落ちた孫楊(Sun Yang、ソン・ヨウ、中国)を指導し、10年以上にわたって中国と断続的に関わりを持っているコッテレル氏は、実体験に基づいて話していると主張。「私は彼らの道のりを目にしてきた。対策も知っている。ストーリーを語れるんだ。事実を把握しているから不安はない」とし、「組織的だという推測は、私がここでずっと見てきたものからはかけ離れている」と話した。

 中国の反ドーピング当局や水泳協会は、現時点で公式にコメントしていない。コッテレル氏は、中国側の代理でこの件について話すことを認められたわけではなく、今回インタビューを受けたことで追い込まれる可能性もあるが、自身と中国競泳界の尊厳を守りたかったと話している。

 コッテレル氏は「(他の選手たちが怒る)気持ちは分かる」とした上で、「(陽性反応が出たとされる)選手たちが、自分にはどうしようもない部分で不幸な状況に巻き込まれたのが残念だ。この件の対応も、彼らにはどうすることもできなかった。選手たちがかわいそうだ」と同情した。(c)AFP